東北地方で珍しくない「しょっぱい味付け」を見直し、「短命県」の返上に向けた取り組みを青森県を拠点に続けてきた中路重之・弘前大特別顧問が、秋田県大潟村で講演した。中路さんは短命県は青森県にとどまらず、隣接する秋田県にも似た事情があるとし「秋田でも小中学校を含め、一般の人も血圧や糖尿病などの身近で重要な症状の知識をさらにつけてほしい」と訴えた。
講演は7月31日。中路さんは弘前大の医学部長などを経て、公益財団法人・青森県総合健診センターの理事長を務め、短命県返上に向けた健康づくりの活動を進めてきた。
中路さんによると、青森県民は漬物や筋子などの魚卵、味の濃い麺といった食事が珍しくないなどの事情から「日本一の短命県」と指摘される。比較的長命の長野県や滋賀県民とは約2歳半の寿命差があり、特に40~60代の男性を中心にどの年代も死亡しやすい傾向にあるという。こうした背景には、飲酒や喫煙、車移動中心による運動不足、多めの塩分摂取、病院受診の遅さがあるとされる。
このため中路さんは、青森の市町村がそれぞれ「健康宣言」を出すことや、小中学校での健康授業、地元企業の健康経営認定制度、各地での健康リーダーの育成、また従来より測定項目が詳細な「QOL(生活の質)健診」などの普及を後押ししてきた。
講演で中路さんは、運動や食事、飲酒、睡眠、歯磨きなどの習慣の乱れが高血圧や糖尿病、中性脂肪の上昇、歯周病などを引き起こすとし、適正な血圧の数値を意識し、健康診断をしっかり受けることが大切だと指摘。「個々が健康の知識を学び、こうした機運を県民全体で盛り上げることがさらに必要」と訴えた。
会場ではみそ汁の試飲のほか、健診受診などでポイントをためて最大3000円分の商品券がもらえる大潟村の健康ポイント制度の取り組みが紹介された。担当者は「みそ汁には具をたっぷり入れ、小さいおわんにし、1杯をゆっくり味わってほしい」と呼び掛けていた。
大潟村の高橋浩人村長は「青森県の取り組みは講演で初めて耳にし、参考になった。今後この分野で青森の方々と連携できると思う」と手応えを語った。【工藤哲】
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