仕事や家事をしなければならないのに疲れている、やる気が起きない…。こうした状況を放っておくと、秋まで不調が続くかもしれない。
医師の川嶋朗さんによると、私たちがバテるのは血管や内臓などの働きをコントロールしている「自律神経」のバランスが乱れるから。
夏バテを乗り切れたとしても、その疲れがたまったところに「秋の気圧や寒暖差」が重なると、自律神経に負担がかかる。すると疲れや食欲不振、メンタルの不調などがやってくる「秋バテ」を起こすことがあるという。
(参考記事:夏の疲れは“時間差”でやってくる?「夏バテ」の先の「秋バテ」に今からご用心!予防のための8つのチェックポイント)
そうならないためには、夏の過ごし方がポイントになるとのこと。「入浴法の改善」や「軽めの運動」が効果的というので、夏の疲れを引きずらないコツを川嶋さんに聞いた。
全身浴がお勧め…でも温度に注意!
バテないために大切なのは「疲れやストレス」をため込まないことだ。ただ、夏の暑さや屋内外の寒暖差は、自分が思う以上に心身を疲れさせる。そこで「38℃前後のお湯に肩までつかる習慣」を作ってみてほしい。
この記事の画像(7枚)「ぬるめのお湯に肩までつかる『全身浴』をすると、水圧の効果で血行が良くなり、筋肉のコリも取れます。自律神経の『副交感神経』を刺激するので、リラックスもできます。寝る1時間前に20~30分つかると、疲労回復と安眠が期待できます」(以下、川嶋さん)
全身浴では心臓の高さまで水圧がかかるため、血のめぐりが良くなるという。入浴剤はシュワシュワした「炭酸ガス系」を使うと、血管が広がり、疲労回復が期待できるとのことだ。
ただし、全身浴をするなら注意点もある。お湯が40℃を超えると逆の「交感神経」が刺激され、興奮や緊張状態になってしまうのだ。汗が止まらず寝つきが悪くなり、疲れがとれにくいこともあるので温度には注意してほしい。温まった後に冷たい水を浴びるのも避けたい。疲れがたまっていると、体がそのまま冷えてしまう可能性があるという。
全身浴をしたいけど、心臓が気になる…、というなら半身浴でもOKだ。シャワーで済ませたくなる夏こそ、欠かさず入浴してみるといいかもしれない。
ちょっとした運動を取り入れる
次のステップは「体力づくり」だ。全身浴で疲れがとれたと感じたら、軽めの運動を始めると自律神経のバランスが整いやすく、食欲増進やストレス発散も期待できるという。もともと疲れがたまっていない場合は、この軽めの運動から挑戦してみてほしい。
お勧めは涼しい時間帯に、30~40分ほどのウォーキングをすること。自分が「少しきついけどできる」と思うスピードで歩くだけでも、バテない体力はついてくる。
ただ、家事や育児に忙しい、足腰の状態が思わしくないこともあるかもしれない。そんな時には「生活にちょっとした運動を取り入れてみてください」と、川嶋さんは話す。
【ちょっとした運動の例】
・洗濯を干す時、1枚ごとにしゃがむ(洗濯物干しスクワット)
・掃除や食事を作る時、つま先立ちで行う(ダイエットサンダルの室内使用も可)
・移動時に階段があったら、積極的に利用する
・電車に乗っている時は、座るのではなく立つ
・自宅ではスマホをあえて離れた場所に置き、歩く頻度を増やす
・入浴時、浴槽の両側に手を当てて、右手と左手で10秒ほど突っ張る
「ちょっと面倒だな、嫌だなと感じることをやってみてください。それがいい運動になります。ジムでのトレーニングもダメではないのですが、過度な運動は疲れをためてしまう可能性があるので、強度には注意してほしいですね」
冷房や冷たい飲食はほどほどに
最後に「体を冷やしすぎないこと」もポイントだ。冷房を必要以上に効かせたり、冷たい飲食を続けたりすると、体が外側からも内側からも冷えてバテやすくなるという。
熱中症になってはいけないので、冷房は使うべきだが、温度設定は27~28℃が望ましい。サーキュレーターで空気を循環させると、このくらいの温度でも涼しさを感じやすいとのこと。夏は冷たい麺類がおいしいが、胃腸を冷やすので、温かいものにしてほしいという。
ちなみに、今回紹介した対策をしているのにバテが取れない場合は、別の病気が隠れている可能性もあるので、病院の受診も考えてほしいとのことだ。秋の食事やお出かけを万全な状態で楽しむためにも、夏のいまから疲れと向き合ってみてはいかがだろうか。
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川嶋朗
医学博士。北海道大学医学部卒業、東京女子医科大学大学院修了。内科、腎臓病学、血液浄化、膠原病、高血圧が専門で、近代西洋医学と補完・代替医療を統合した医療を目指している。冷え性対策や温活のエキスパートとしてメディアに多数出演。現在は神奈川歯科大学特任教授、統合医療SDMクリニック院長を務める。『どうせ一度きりの人生だから 医師が教える後悔しない人生をおくるコツ』(アスコム)など、著書多数。
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