国立感染症研究所が分離した新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真=同研究所提供

 新型コロナウイルス感染症が5類に移行して1年以上が過ぎ、マスク姿の人も減ったが、7月以降、再び感染拡大傾向にあるという。千葉県感染症情報センターによると、1定点当たりの感染者報告数は第18週(4月29日~5月5日)の2・77人を底に、第28週(7月8~14日)は12・77人に上った。最新の変異株にはどんな特徴があり、どう対応すればいいのか。千葉大医学部付属病院感染制御部長の猪狩英俊教授に聞いた。【聞き手・柴田智弘】

 ――感染拡大の「第11波」が来たとも言われています。

 ◆年に2回、夏と冬に流行があるのは確か。増え方のペースや時期など、流行の推移をみると、去年と同じカーブをなぞっているとの印象を受けます。

 ――昨年は第35週(8月28日~9月3日)に28・68人とピークを迎えました。今季も感染力の強い変異株が現れたのでしょうか。

 ◆2022年以降はずっとオミクロン株で、細かい部分での変異が進んでいます。今春ごろまではJN・1系統が流行していて、秋の予防接種のワクチンはそれに対応したものと決まっていたのですが、4月ごろからKP・3・3系統が支配的な流行株になってきました。感染力が強いなどと言われていますが、それは不明です。ただ従来のワクチンを免疫回避するようなので、新しいワクチンを接種したほうが効果を期待できることは確かだと思います。

 ――従来と症状は違うのでしょうか。

猪狩英俊教授=千葉大医学部付属病院提供

 ◆あまり変わらないと思います。発熱と咽頭(いんとう)痛。人によって、痛みが強い、せきが多いなどの感想はあると思いますが、これまでの新型コロナと同様だと思っていい。一方で、千葉大病院でも一定の割合で人工呼吸器を必要とする入院患者がいます。5類になったから一般の風邪になったというのはミスリードの可能性があります。

 ――予防するには、どうすれば?

 ◆基本的には飛沫(ひまつ)感染なので、予防策はマスクと手洗いです。暑いのでマスクはつらいかもしれませんが、感染抑止か熱中症予防か、どちらを優先するかは自身や周りの人の健康状態、周りの密集の程度などを考慮して判断することになります。高齢者や基礎疾患のある人は一定の割合で重症化しますし、命の危険もあります。家族、友人、職場など周囲の人がどういう人なのかを考えて、感染対策を怠らないようにしてください。

 ――感染疑いがある場合、どんな対応を?

 ◆手足口病やヘルパンギーナなど他のウイルス性の疾患も流行していますので、検査を受けて診断することが求められます。新型コロナと診断されたらウイルスを抑えることが第一なので、自己負担は発生しますが、抗ウイルス剤を処方してもらうことを検討したほうがいいと思います。

 ――今後は、どのようになりそうですか。

 ◆今後ピークに向かい、第11波が収束するのは秋分の頃ではないか。10月にはワクチンの秋接種が始まります。インフルエンザへの備えも必要でしょう。

 ただ、12月ごろになると、次の新型コロナの感染拡大が始まる可能性があります。予防するためにも、重症化や後遺症を防ぐためにも、科学的に効果が示されている有力な対策はワクチン接種です。特別な事情がなければ、新しいワクチンを打つことを検討してほしいと思います。

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