猛烈な暑さが続く中、空港では屋外で作業する地上スタッフの熱中症対策として、水冷式やファン付きの安全ベストを着用したり、制服に半袖のポロシャツを採用したりといった動きが広がっている。こまめな水分補給と合わせ、夏の繁忙期に安全で時間通りの運航を支える。
荷室は「息苦しい暑さ」
関西国際空港から沖縄・石垣島に向けて出発する日本トランスオーシャン航空機を、航空機地上支援会社「Kグランドサービス」(大阪府泉佐野市)の中田和成さん(40)が手を振って見送った。強い日差しが照りつけ、額に汗がにじむ。現場の温度計は40度を超えていた。中田さんは、航空機の手荷物の積み下ろしや地上走行の誘導、機体のけん引などを担当。遮るものがない屋外での作業が多く、年々暑くなっていると感じる。客室の下にある貨物室内での作業は、狭い上に空気の循環も少ない。「息をするのも苦しいほどの暑さだ」と言う。
同社の一部地上スタッフは6月から、初めて水冷タイプの安全ベストを着るようになった。凍らせた水の専用ボトルが入っていて、冷水がチューブを循環して胸や背中を冷やす。「冷たさを実感できる。一度着たらやめられない」と笑う。同僚数人とチームで作業し、「体調が悪くなると、顔色の変化でわかる。すぐに水を飲むように指示して休憩させる」と注意を払う。
同社は麦茶やスポーツ飲料、塩分補給のタブレットを用意し、控室の入り口にミスト付きの大型扇風機を新たに設置。大型冷凍庫も導入し、水冷服の専用ボトルと大量の氷を凍らせ、休憩中にかき氷も楽しめるようになった。中田さんは作業を終えて控室に戻ると、すぐに麦茶を飲み干し「おいしい。『よく頑張りました』と自分に言いたい。暑くて大変だけれども、プロとしてどんな天候の日にも安全で定刻に飛ばすことを心がけている」と胸を張る。
全日空は制服にポロシャツ
全日本空輸グループは今夏、20年ぶりに国内11空港で働く地上スタッフの夏の制服を新調し、ポリエステル100%のポロシャツを初めて採用した。関空で航空機の手荷物の積み下ろしなどを担当する皆本佳奈さん(26)は「暑くて汗だくになりながら作業するので体力を使う。ポロシャツは速乾性があって汗が張りつかず、風通しもいい」と歓迎する。
併せて今夏からファン付きの安全ベストも着用している。両脇腹の部分に取り付けられたファンを回すと、服の内側から風を上向きに吹かせてベストが膨らむ。「風があるだけで体感はかなり違う。顔の付近も涼しくなる」と話す。地面からの照り返しが強く、目の痛みを和らげるようにサングラスをかけるスタッフも多い。
事務室には会社支給の飲み物とアイスキャンディーが常備されている。皆本さんは作業を終えて戻ると、エアコンの前に立って熱くなった体を冷やし、麦茶や水を飲んでからアイスキャンディーを食べる。同僚数人と一緒に「今日も暑いなあ」「次も頑張ろう」と会話が弾む。皆本さんは「好きな航空機のすぐそばで働けるのは魅力で、チームワークで暑さを乗り切りたい」と話している。【中村宰和】
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