使用済み紙おむつを摩擦乾燥機にかけて出てきた粉体=愛知県弥富市のサハシ特殊鋼弥富センターで

 超高齢化に伴い、需要が拡大する紙おむつ。だが、使用後の大半は焼却処分されている。温室効果ガスの抑制や限りある資源を循環させるために、再資源化は避けて通れない。先行する事業者や自治体の取り組みを見た。(有賀博幸)  4月初旬、愛知県弥富市にあるサハシ特殊鋼(名古屋市)の事業所で、使用済み紙おむつの再資源化が実演された。処理機は同社製の摩擦乾燥機。毎分1800回転する特殊な羽根車と投入物、および投入物同士の摩擦で粉砕と乾燥を同時に行う。細かくされた紙おむつが機械に投入されると、7分ほどで米ぬかのような粉体となって出てきた。摩擦熱で滅菌され、投入前に2キロだった重さは550グラムに。同県内の病院関係者や関東地方のバイオマス事業者らが、感心しながら見入った。  取り組むのは、紙おむつのメーカーや販売業者、廃棄物処理業者でつくる「NIPPON紙おむつリサイクル推進協会」(同)。今月から佐賀県伊万里市の会員事業所で、この機械を使った実証事業を始めている。今後、粉体をペレット状にし、樹脂原料に混ぜてバケツやごみ袋などへの製品化を計画する。浅井修代表理事(57)は「施設や保育園からの問い合わせも増えている。やり方は地域によって違うが、分かりやすい形で、使用済み紙おむつは資源だと示したい」と意気込む。  メーカー大手ユニ・チャーム(東京)は本年度、鹿児島県志布志市からの受託事業として、使用済み紙パンツ(おむつ)の専用回収ボックスを市内470カ所のごみ回収所に設置し、回収を始めた。ボックスには、リサイクルで抽出したプラスチックを配合した。

ごみ回収所に設置された紙パンツ専用ボックス=鹿児島県志布志市で(ユニ・チャーム提供)

 同社は、独自開発したオゾン処理技術により、2022年からリサイクルパルプを原材料に、通常品と同品質の再生紙パンツの生産を開始。現在、南九州地区を中心に病院や介護施設の約60カ所で使用されている。ESG本部広報室の和田高幸さんは「他施設からも『使いたい』と要望があり、回収量を増やす必要もあった」と本格回収の背景を明かす。今月下旬から、一部エリアで再生パルプを使用したベビー・ペット商品を店頭販売する。

◆自治体の9割超 焼却処分で処理

 日本衛生材料工業連合会(東京)の推計では、使用済み紙おむつの国内排出量は、こども用と大人用を合わせ2020年で221万トン。少子化でこども用は減るが、大人用が30年には1・2倍になり、合計で245万トンを見込む=グラフ。  環境省が22年度に行ったアンケートで、使用済み紙おむつの処理について、「焼却処分」と回答した自治体は、事業系が90・7%、家庭系は94・5%だった。再資源化を実施・検討している自治体は、全国で35市町程度にとどまる。同省は30年度までに100自治体に増やす目標を掲げる。  静岡県は紙おむつの再資源化に向け、本年度の予算に2千万円を計上。公募に応じた市町と事業者に支援金(上限1千万円)を支給し、リサイクルや分別回収の方法、活用先を検討してもらう。「うまく循環すれば、子育てや介護の現場の負担軽減にもつながる」と担当者は期待する。


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