南海トラフ地震臨時情報が出されたが、大きな津波が想定される和歌山県では、『支援がないと避難できない人たち』の命をどう守るのか、備えを進める人たちから不安の声があがっている。

【動画】『最大16mの津波』到達予想の和歌山・白浜町 高齢者施設は『自力で避難できない入居者』の避難体制に課題

■最大16メートルの津波到達予想 津波想定を見直す「観光施設」

和歌山県白浜町は、南海トラフ地震で最大16メートルの津波が到達すると予想されている町だ。

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町内にある観光施設「白浜エネルギーランド」は、自然エネルギーの仕組みを学んだり、白良浜が一望できたりと人気のスポットだが、避難経路を意識しながらの営業が続いていた。

白浜エネルギーランドが浸水する事態となれば、さらに高台の白浜町役場まで避難するということだ。

白浜エネルギーランド 堀彩夏さん:今までも津波への想定はあったんですけど、今回『巨大地震注意』という大きなきっかけがあったので、また再度見直しています。

施設を訪れる人も備えをしながらの観光だ。

兵庫から来た人:ちょっと迷ったけど、せっかく夏休みなのでどこか連れて行ってあげたくて、一応非常食とか飲み物とか持ってきてますね、多めに。

■330人が暮らす高齢者施設 津波に備え最上階に「備蓄庫」

真っ青な海を望む白浜町の高齢者施設「成華苑」。 12の施設でおよそ330人の高齢者が生活している。

海抜はおよそ5メートル。 白浜町のハザードマップでは、南海トラフ地震が発生した場合、2~5メートルほどの津波が到達すると想定されている。 「南海トラフ地震臨時情報」を受け、施設では備えが進められていた。

成華苑 愛須政仁事務長:水、米、一緒に食べる練り梅、海苔の佃煮、こういう施設なので、障害のある方、普通のご飯を食べられない人もいるので、高カロリーのゼリー職員80名、入居者さん97名、3食を食べて1週間過ごせるように、1週間分の備蓄をここへすべて用意させて頂いている状況です。

この施設は6階建て。 津波を想定して最上階に備蓄庫を構えている。

備えは備蓄品だけではない。 避難を想定した訓練も実施している。

成華苑 愛須政仁事務長:誰でもセッティングできるように矢印に合わせて車いすをそのままロープで括りつけて、数人で引っ張るという訓練をしています。

こちらの施設の場合、南海トラフ地震で想定される津波では、最低でも3階以上への避難が必要になり、このような垂直避難の訓練を年に3回ほど行っているということだ。

■職員が手薄な夜間 避難にかかる時間は昼間の倍

しかし、ここまで準備をしていても、夜間は、各階に職員は1人ずつ。 車いす1つを上げるのに、職員3人が必要なため、避難に昼間の倍以上の時間がかかってしまう。

また、地震や津波の状況を理解できない入居者がいることも避難を難しくさせている。

成華苑 愛須政仁事務長:利用者さんの場合は、パニックになったり不安になって一歩が出なかったり、動かないということがあるので、そのあたりを緊急性が迫っている中で、利用者さんにご理解いただきながら避難を遂行できるか、不安に思う。

いつ来るかわからない南海トラフ地震。 今回の「南海トラフ地震臨時情報」で、改めて命を守るための課題が突きつけられている。

■「巨大地震警戒」が出た際のシミュレーションを

政府は、このまま地震活動や地殻変動に変化が見られなければ、15日午後5時で「南海トラフ地震臨時情報」の呼び掛けを終了する予定だ。

関西テレビの神崎報道デスクは、『巨大地震警戒』が出された際の、備えも想定する必要があると指摘する。

関西テレビ 神崎博報道デスク:南海トラフ地震臨時情報が出されたのは、今回が初めてで、臨時情報の中でも『巨大地震注意』だった。実はもう一つ上に『巨大地震警戒』がある。こちらは、さらに避難行動にフェーズを移さなければならないということがあるので、今回は注意で様々な気づきがあったと思うんですが、それをベースに今度は『巨大地震警戒が出たらどうすんねん』ということも考えとかないといけないと思います。

■宿泊施設などに求められる対応

今回の「巨大地震注意」は、観光施設や宿泊施設をはじめとした経済にも大きな影響が出ている。経済学者で大阪大学大学院の安田洋祐教授は『宿泊施設などが避難経路等をあらかじめ利用者に告知することも大切』とする考えを示している。

大阪大学大学院 安田洋祐教授:宿泊のキャンセルなども出たという報道も耳にしました。今後そういった観光施設や宿泊施設、例えば備蓄をこれぐらい行っているなど、いざという時の避難経路を利用者に対してあらかじめWEBサイト等で告知するといった取り組みを進めることで、ある程度安心して過ごせる。そういった取り組みも今後は期待できるかなと思います。

近い将来必ず起こるとされる南海トラフ地震。 警戒のギアを一段上げて今できる備えが求められている。

(関西テレビ「newsランナー」 2024年8月13日放送)

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