特集はお盆のごちそうです。長野県の大北地域や西山地域でこの時期によく食べられる「えご」。原料は日本海で採れる海藻です。近年、消費量も収穫量も減少傾向にあるといいます。お盆の食卓を飾ってきた伝統の味の今を取材しました。
■お盆のにぎやかな食卓に「えご」
長野市七二会の島田満智子さんの家。
迎え盆の8月13日は孫やひ孫など13人が集まり、にぎやかな食卓となりました。
たくさんのごちそうが並ぶ中、ありました、ちょっと地味な色合いの「えご」。でも、西山地域ではお盆に欠かせない伝統の味です。
ひ孫・愛さん:
「おいしい!(グーポーズ)」
実也さん:
「海の風味がしてよろしいかと思います」
■お盆の定番だけど消費傾向に変化も
長野市信州新町のスーパー「フレッシュトップ田中屋」。原料の海藻・エゴノリを乾燥させた「えご草」が売られていました。
「えご」はこれを煮溶かし、冷やして固めたもので、そのまま食べられるパック詰めも販売中です。
購入した人はー
地元の住民(67):
「定番、えごはお盆に食べるものという、なんとなく頭に定着してるので。県外に出た人たちなんか戻ってくると懐かしいと言って」
信州新町から(88):
「お振る舞い、親戚とか来たときにやるみたい。えごはごちそうみたいですよ、山だから」
店は「えご草」を通年で扱っていますが、お盆と年末年始はまさに「ド定番」の人気。ただ、消費の傾向には変化が生じているようです、
フレッシュトップ田中屋・田中利加子社長:
「えご草は昔、1日何十袋という単位でお盆の時期は出てました。だんだん家で作る人も少なくなってきて、ここ数年は出来合いのものの方がよく購入されている」
■「えご」取り巻く環境は厳しく
食の多様化や利便性の追求もあってか「えご」を作る新潟県長岡市の加工メーカー「猪貝」によりますと、消費量は減少傾向ということです。
さらにー
エゴノリが採れるのは新潟・石川・青森などの日本海沿岸。「漁」は夏の限られた時期しかできませんが、地域の収入源の一つとなってきました。
しかし、高齢化などによりエゴノリを採る漁師が年々減少。
その上、海水温の上昇が原因でエゴノリが育たず、2023年、2022年の収穫量は全国で10トンから15トンほどと40年前の10分の1程度に減りました。
また、石川県能登地方では、1月の能登半島地震の影響で、海藻が育つ海域に泥が堆積してしまい、今シーズンはほとんど水揚げがなかったということです。
取り巻く環境は厳しくなっていますがー。
「えご草」を購入した客:
「好きだから、やっぱり暑いときは冷やして作ってね」
■ひ孫と家で「えご」づくり
長野市七二会。
「おじゃまします」
えご草を購入した長野市七二会の島田満智子さんは御年90歳。えごを作る様子を見せてもらいました。
帰省していたひ孫たちにも手伝ってもらいながら、まず「えご草」に付着した他の海藻などを丁寧に取り除きます。
島田満智子さん(90):
「これがひと手間だからね、みんなめんどくさがって」
■鍋で煮ると溶けていく
「目分量で、固いの好きな人は少な目で、私はいつもヒタヒタ」
続いて水を入れて鍋で煮ます。
満智子さん
「よく煮るのが好きな人に、ざっと煮るのが好きな人に好みで。ざっと煮ると少し筋が残る感じで少しザラっとした感じするけど」
約5分後ー
満智子さん:
「この辺もう溶けてきた」
ひ孫「うん、溶けてきた!」
さらに数分煮るとー
満智子さん:
「ほら、もう形もない。もうこれで、そこへあけてね、簡単ですよね」
■トレーに入れて冷蔵庫へ
金属のトレーで粗熱をとり、冷蔵庫で一晩冷やします。
島田満智子さん(90):
「おごちそうだったんだよね、海から長野県のここらへんは遠いから。お客さんを呼んだ時には、なくてはならないみたいな。でも今の若い人たちは、全然そんなことない。今は食べるものがいっぱいあるから、他に」
■冷えて固まって完成!
翌日ー
「すっかり固まった」
冷えて固まり、「えご」が出来上がりました。これを食べやすい大きさに切りわけます。
■仏壇にお供えしてから食べると
仏壇にお供えー
「いただきます!」
豪華な料理が並ぶお盆の食卓。えごを食べた子どもたちはー
ひ孫・駿さん:
「でも、いける」
■子ども「後から嫌、おいしくない」
駿さん:
「後から嫌だ。最初食べたときは大丈夫だった。(どんな味がした?)謎」
ひ孫・慶さん:
「おいしくない」
■「大人になると好きになるよ」
食べ慣れていない子どもたちは苦戦していましたが大人たちは、からし醤油やわさび醤油をつけてー。
長男・実也さん:
「おいしいです。子どものときはちょっと苦手だったんですけど、やっぱり大人になって味覚が変わるんですかね、好きになりました」
長男・実也さん:
「大人になると好きになるよ、きっと」
■塩の道で入ってきたという言い伝え
磯の香りが広がり、ミネラルも豊富な「えご」はまさにごちそう。
信州には「塩の道」で入ってきたといわれ、食べられているのは大北地域や西山地域、飯山地域などです。
西山より先の長野市街地方面に広がらなかった理由についてはこんな言い伝えがあります。
島田満智子さん:
「100年以上前だね。糸魚川から流れてきたというか、行商の人が(エゴノリを)売りに来て、西山というかこのへんで売り切れちゃったから、だからここまでの人が食べるの」
時代や環境の変化を受ける「えご」。
それでも信州には、作るのも、食べるのも楽しみにしている人たちがまだまだ大勢います。
島田満智子さん:
「ずっと続けばいいと思うけどね。私は生まれ育ったから、この味に慣れているというか、おいしいと思うんじゃないかな。
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