秋田県湯沢市に「曲木」の技術で家具を作り続けているメーカーがある。唯一無二といわれる老舗家具工房の技を受け継ごうと奮闘する職人たちを紹介する。

1910(明治43)年に創業した湯沢市に工房を構える「秋田木工」。

圧力をかけて変形させると元に戻らないという木の性質を利用した「曲木」の手法で、椅子やテーブルなどの家具を製作している。

曲木家具を作るメーカーは国内にもあるが、ブナやナラなどの無垢(むく)材をひねり上げる立体的な「曲木」を専門に行っているのは、秋田木工が唯一といわれている。

従業員は現在64人。20代の若手から70代のベテラン職人まで、幅広い年代が自分に任された工程を黙々とこなし、「曲木」の技を守り続けている。

地元湯沢市出身で入社7年目の加藤辰弥さん(24)。

元々ものづくりが好きだった加藤さんは、高校卒業後、生活の中に身近にある家具を作りたいと秋田木工に入社した。

加藤さんが担当するのは「曲木」の工程。100度近い蒸気で蒸して水分を含ませた木材を、型に合わせて曲げていく作業で、木材が硬く戻るまでの5分という短い時間で仕上げなければならない。

入社以来、曲木加工に取り組んできた加藤さんは、ベテラン職人と息を合わせて作業を進めていく。

 曲木課・加藤辰弥さん:
「曲げる際に、材料の1本1本が性質が違っていて、自分の感覚でやっていくしかないので、基本的な曲げ方や材料の締め方など細かいところを教わっている。仕上がった際のきれいな曲がり方を見たときに、気持ちが晴れてくる」

曲木をした木材を家具に組み立てる作業を行うのは、千葉真美恵さん(26)。

千葉さんは、高校卒業後、県外に出たものの湯沢市にUターンし、家具が好きだったこともあり2024年4月に転職した。

 組立課・千葉真美恵さん:
「今まで家具を作ることはやったことがなかったので、初めてのことで知らないことばかりですごく楽しい。今は家具の組み立てを学んでいる。ものによって、はまらなかったり、はまったりするものがあり、慣れるまで大変」

 秋田木工・風巻穣社長:
「若手は新しい発見も見せてくれるので楽しみ。日々少しずつ技術の継承を前に進めている」

秋田木工では、曲木の魅力を幅広い世代に知ってもらおうと、新たな取り組みにも挑戦している。

秋田木工の製品で長らく愛されている背もたれのない椅子、スツール。このスツールの座面に、秋田新幹線こまちの座席と同じ生地を使用した製品を作り、7月にクラウドファンディングに出品した。限定販売のスツールには期間中、40人から応募があった。

曲木技術を受け継ぐ職人たちの思いが、新たな魅力ある家具を生み出している。

 秋田木工・風巻穣社長:
「『秋田木工』という名前をもっとたくさんの人に知ってもらいたい。曲木の製品が素晴らしいものだともっと知ってもらいたい」

木を“立っているときよりも美しく見せる”曲木の技。その思いと誇りを胸に、職人たちはきょうも作業を続ける。

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