外は汗が噴き出す気温でも、オフィスや飲食店、通勤電車の中は冷房が効きすぎてキンキン。汗をかいたところで急に冷やされ、体や手足がつらいという人は多いだろう。

産婦人科医でヨガ指導者の高尾美穂さん
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こんな状態が続くと、体もだるくなり、日々のパフォーマンスが落ちていく…。そんな“夏冷え”の状態を解消する方法を、産婦人科医でヨガ指導者の高尾美穂さんに聞いた。

夏は自律神経が迷う

高尾さんによれば、夏冷えは冬の冷えとは異なるという。夏冷えの特徴とはどのようなものなのか。

「まず、オフィスや電車、スーパーなどで冷房が効きすぎていることや、冷たい飲み物や食べ物を取る機会が増えることで、物理的に体が冷えてしまいます。それなのに、外は暑すぎるので、体が暑いのか寒いのか分からなくなってしまい、自律神経の調整がうまくいかなくなってしまいます。これが夏冷えの根本的な問題です」(以下、高尾さん)

外は暑いのにオフィスは震えるほど寒い…(画像はイメージ)

自律神経は、体温や発汗、心臓の動きや瞳孔の開きなど体全体の働きをコントロールして、人間の体の状態を一定にキープしようとする。

自律神経の働きがうまくいかなくなると、体のだるさ、不眠、胃腸の働きの低下、動悸など、様々な問題が起こってくる。

「体にはこのようなことが起こっているので、夏冷えはある意味では冬の冷えよりも過酷かもしれません。でも、ほとんどの人がそれを知らないのが問題です」

解決の鍵は「筋肉」

高尾さんによれば、夏冷えと、夏冷えから来る不調を根本的に解決する方法は、「筋肉量を増やして、脂肪を減らすこと」しかないという。

筋肉は熱を生むことができる臓器なので、筋肉量が多いほど体は温かくなる。 一方、脂肪は冷たい組織なので、脂肪が多いほど体の表面は冷えやすくなる。女性は男性よりも筋肉量が少なく、さらに脂肪量が多いので、より冷えやすいのだ。

なお、脂肪は断熱材のような役割もするため、脂肪が多いと体内で生まれた熱を手放すことができず、熱を体の内側にこもらせやすい。そのため、「太っている人のほうが暑そう」といった状況も引き起こす。

では、どのようなエクササイズを取り入れたらいいのだろうか。高尾さんが勧めるのは、「早歩き」と「スクワット」だ。

通勤の際にもできる「早歩き」(画像はイメージ)

「スマホを見ながらダラダラ歩くことをやめて、普段よりスピードを上げて“今、歩いている”ということをしっかり意識してください。普段あまり運動をしない人はそれだけでも違いが出るはずです」

スクワットは、「普段の生活の中でできるタイミングを見つけてやってみてください」とのこと。

「私は25回を1セットとして、1日3セットを目標にしています。できていない日は、とりあえず1セットを終わらせてから寝るようにしています。でもそんなストイックな人はほとんどいませんから(笑)、できるときに少しでもやることが大切です」

手軽な「空気椅子スクワット」

たしかに、家事に育児にと毎日忙しいなか、1日3セットはハードルが高いと感じるかもしれない。そこで高尾さんが提案してくれたのが、「空気椅子スクワット」だ。

家でもオフィスでもできる「空気椅子スクワット」

やり方は、椅子に座る時にすぐに腰を下ろさず、少しお尻を浮かして空気椅子の状態を作り、3秒キープ。これだけでも太ももがじわじわ熱くなり、筋肉に刺激を与えることができるという。離席して着席するたびに実践すれば、それなりの筋トレに。これなら無理なく取り入れられそうだ。

「夏って、気持ちが高揚して、ついハッスルしちゃうんですよね。でも本来は体の負担が大きく、疲れやすい時期。ぜひ、体をいたわりながら、筋肉を増やすことを意識して、夏冷えを撃退してください」

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高尾美穂(たかお・みほ)
産婦人科専門医、医学博士、スポーツドクター、ヨガ指導者。女性のための統合ヘルスクリニック「イーク表参道」副院長。 婦人科部門責任者として女性のライフステージ・ライフスタイルに合った治療法を提示し、選択をサポート。マターナル(周産期)ヨガも提供。 著書に、『生理周期に合わせてやる!超効率的フェムテックダイエット』(池田書店)、『超かんたんヨガで若返りが止まらない! 老けたくないなら、骨盤底筋を鍛えなさい』(世界文化社)など。

イラスト=さいとうひさし

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