<Q> 個人年金保険に加入しています。年金として受け取るのがいいのか、定年を機に一括で受け取る方がいいのか迷っています。税金がどのようにかかるのかを知りたいです。

◆退職後の資金全体考えて ファイナンシャルプランナー(FP)・小川貴行さん

<A> 個人年金保険は、基本的には年金形式で受け取ります。10年の確定年金なら、10年間毎年決まった額が支払われます。また、多くの場合は一括で受け取ることもできます。ただ受け取り開始後の運用がなくなるため、年金で受け取る場合の総額から所定の率の分だけ割り引かれた「年金現価」の受け取りとなります。  受け取る方法によって課税の方法も変わります。年金の場合は雑所得の扱い。税金を計算するための所得は、1年間に受け取る金額から1年分に相当する払込保険料を引いた額です。一括の場合は一時所得となります。受け取った金額から払い込んだ保険料と特別控除の50万円を引いた額が所得。さらに所得に2分の1をかけた金額に課税されます。  例えば年金で100万円を10年間受け取る契約の保険で、一括だと900万円になり、払い込んだ保険料が700万円の場合を考えてみましょう。年金として受け取る雑所得なら、100万円から700万円の10分の1を引いた30万円が1年間の課税対象です。一括の一時所得なら、900万円から払込保険料の700万円と50万円を引いて150万円となり、その半分の75万円に税金がかかります。  ここまでに挙げた数字は、イメージしやすくした一例で、実際には利率や金額はケース・バイ・ケースです。例えば、1990年代前半までの個人年金保険は、当時の金利を反映し利率が高いものが多く「お宝保険」などと呼ばれます。ただ、利率が高いほど、一括で受け取る場合の年金現価は目減りします。また、雑所得も一時所得も、給与や公的年金などの他の所得と合算して所得税や住民税を計算します。実際の税金がいくらになるかは、個人年金の額だけでは計算できません。  個人年金の受け取り方は、退職金や公的年金などセカンドライフの資金全体を考えることが大事です。企業年金や個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」などがある人もいるでしょう。退職後にもらえるお金を一覧表にして、住宅ローンや子どもの教育費など大きな支出予定とともに整理することを勧めます。いつまで、どのように働くかも大切です。  さまざまな要素が絡むため、一概にどちらがいいとは言えません。強いて言えば、一括形式に向いているのは、手元の資金に不安がある人、住宅ローンの返済に充てたい人、利率が低い場合、少額投資非課税制度(NISA)などで積極的に運用したい人、健保などの扶養から外れたくない場合、などではないかと思います。年金でもらうと税金や社会保険料が上がってしまう人もいるでしょう。一方の年金は、お宝保険などの高利率の契約で一括だと大きく金額が減ってしまう場合、会社員などとして働いていて年金収入があっても社会保険料が上がらない人に向いている場合があるでしょう。

<詳しく!>終身、一括選べるケースも

 契約時に決めた一定期間に年金を受け取る「確定年金」だけでなく、生きている限り受け取れる「終身年金」もある。設定した保証期間内なら本人が死亡しても遺族が年金を受け取れる保証期間付き終身年金は、一般的に保証期間内の受け取っていない期間の年金現価を一括して受け取ることができる。確定年金の場合と違い、税金は雑所得として計算する。また保証期間が経過後も生存していれば、再び年金の受け取りが始まる。死亡するまで続き、雑所得として課税される。  契約者と受取人が異なる場合は、受け取り開始時点は贈与税、2年目以降は雑所得として課税される。個人年金保険は、最初は年金として、数年後に残りを一括で受け取るなど、状況に応じて変えられる場合もある。小川さんは「迷う時や変更を考える場合は保険会社に問い合わせてほしい」と話す。 (海老名徳馬) <おがわ・たかゆき> 1974年、愛知県生まれ。証券会社などを経て2015年にFPに。家計の見直し相談センター名古屋で資産運用などの相談員として活動する。同県稲沢市在住。


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