「キス」「おっぱい」など、子どもが口にする性的な言葉にドキッとしたことはないか。子どもの場合、初めは興味本位で口にしたり検索したりすることがほとんどで、大人が想像するような性的欲求に起因するものではないことが多い。
だが子どもが性的な言葉を口にしたり検索したりしたと分かったときは、性教育の好機と捉え家庭で子どもと話し合ってほしい。
発達段階から見ると、幼児から小学校低学年にあたる5〜8歳の時期は、周囲の大人やアニメの登場人物などを通して男女の体の違いが認識できるようになる段階で、そこに性的な意味合いはないと考えられる。
女子は9〜10歳ごろ、男子は11〜12歳ごろから第二次性徴期に入るが(個人差あり)、性的な欲求が出始めるのはそれ以降と考えるのが一般的だ。
未就学の頃に「おしり」「うんち」など下ネタの言葉を好んで発する傾向がある。小学1、2年くらいまでの性的な言葉への関心も未就学児の延長線上で、遊び感覚で使っていると捉えればよい。だがネット上の刺激的なコンテンツが「性的な早熟さ」を加速させることもあり、家庭でネットにフィルターをかけるなどの工夫は必要だろう。
子どもが性的な言葉を口にしたり検索したりしたことが分かったときは、内心びっくりしても、普段の会話と同じテンションで尋ねてみよう。検索履歴を見つけたときも同様に「こんなの見つけたけど、どうして?」と聞いてみる。
このとき、決して子どもを叱らないことが重要だ。頭ごなしに怒ったり、「子どものくせにいやらしい」「まだ知らなくていい」などと言ったりするのは性的なことをタブー視する言動。家庭内で性的にタブーな環境をつくると、性被害に遭ったり望まぬ妊娠をしたりしたとき、「親に言ったら叱られる」と思って相談できなくなってしまう。
アダルトコンテンツは大人向けにつくられたフィクションだが、子どもは現実との区別がつきにくく、見たものを現実と思い込む危険性がある。繰り返し見ると「性の認知のゆがみ」につながることもある。
子どもが見た形跡があれば、叱らずに「子どものあなたには見てほしくない」と真剣に伝えてほしい。
家庭で性について話す際の大事なポイントは3つ。①子どもからの質問を受け入れる②噓をつかずに、子どもからの質問にのみ答える③気合は不要――。
教えるべき内容には年齢に応じた段階があり、国連教育科学文化機関(ユネスコ)などによる「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」はレベル1〜4に分けている。5〜8歳はレベル1で、赤ちゃんはどこからくるのかを知ったり自分の体の権利を学んだりする。
胸、お尻、陰部など水着を着たときに隠れる部分と口を含めた「プライベートゾーン」は自分の体の権利につながるため、性教育の入り口として真っ先に教えたい。相手が誰であろうと勝手に触ったり、他人に見せたり、写真に撮ったりするべきではないと伝えよう。
「赤ちゃんはどこからくるのか」は事実だけを伝える。例えば「男の人と女の人にはそれぞれ赤ちゃんのもとがあり、それがくっつくと赤ちゃんが生まれる」とまず核心だけを説明し、質問があれば答える形だ。
「離れたところにある2つのものが、どうしたらくっつくのか」という質問をするにはある程度の理解力が必要なので、最初から無理に答える必要はない。聞かれたら、その時初めてセックスやそれ以外の妊娠する手段(人工授精や顕微授精)の話をする。
子どもがいろいろと知りたがるなら、レベルで制限せずに答える。適切な言い方が分からなければ「調べておくから後で話そう」と間隔を置くのもOKだ。性教育の絵本を「これを読んでみて」と渡してもいい。
自分を守る意味でも正しい知識を伝えることは大事だ。子どもと性について話すときが来たら、親もリラックスして対話したい。
=詳細は日経クロスウーマン DUAL(https://woman.nikkei.com/dual/)6月4日付で
たなか・まゆ 小中高校での性教育講演をはじめ、保護者、教員、企業などに向けても性教育の普及活動を行う。「助産師まゆさん」としてインスタグラムやX(旧ツイッター)で情報を発信中。【関連記事】
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