宮野・網走署長(右)から嘱託書を受けた嘱託警察犬の「ババ」と指導手の永田さん(中央)=網走市で2024年8月22日午後1時31分、本多竹志撮影

 北海道網走市のラブラドールレトリバー「シトロン・オブ・メモリアル・プチ・ジェイピー号」(愛称ババ、雌7歳)が、道警北見方面本部の嘱託警察犬に合格した。普段は人懐っこく、甘えん坊で家族の笑いの中心にいるというが、初めて挑戦した嘱託警察犬の審査会で一発合格。その素質を見いだしたのは、飼い主の元刑事だった。

 22日、網走署で宮野智幸署長から嘱託書を交付されたババは、きりりとした表情を見せた。そんな愛犬の姿に目を細めたのは、ババの指導手、永田愛さん(44)だ。

 永田さんが0歳のババと出会ったのは2017年。少し前まで道警本部の捜査1課などで勤務していたが、家庭の事情で退職し、以前から飼いたかった「黒ラブ」を家族の一員として迎え入れた。

 病気知らずで元気いっぱいのババは、フライングディスクの競技会などにも参加してきた。足が速く、運動神経は抜群。散歩中には自分の気に入った匂いを探す姿もよく見られた。

 「警察犬に向いているのかも」。そんな思いを抱いていた中、ニュースで北見方面本部管内では警察犬が1頭しかいない状態が続いていることを知り、挑戦することを決めた。

6月に実施された審査会に初挑戦する指導手の永田さんとババ=北見市で2024年6月25日午前9時40分、本多竹志撮影

 近隣の指導手の先輩らに教わりながら、1年近く訓練を続けた。もともと、「座れ」などの指示は理解しており、場所を離れて待たせるなど警察犬に必要な基本的訓練を毎日、短時間でも繰り返したという。

 6月に北見市で開かれた審査会で、ババは足跡をたどって遺留品を発見する「足跡追及」の課題を一発でクリア。合格を勝ち取り、9月から1年間の任期で永田さんと共に依頼された捜索活動などに当たることになった。永田さんは「うれしい。事件や事故で困っている人の役に立ちたい」と表情をほころばせる。

 北見方面本部管内では、23年の警察犬の出動は、行方不明者の捜索など6件だった。ババの合格により、今年度は6年ぶりに2頭体制になる。同本部鑑識課の赤山岳史課長は「嘱託警察犬の指導に挑戦する人が増えてほしい」と問い合わせなどに応じており、ババと永田さんに続くペアが現れることを期待している。

 永田さんの夫も警察官で、ババも「警察一家」の一員となった。かつて警察犬に身近に接してきた永田さんは、その姿をババにも重ね、「活躍させてあげたい」との思いを強くする。「捜索はババの能力だけでなく、指導手の技量も必要」。名コンビを目指して活動が始まる。【本多竹志】

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