富山県高岡市で江戸時代から続く「高岡御車山(みくるまやま)祭」を題材にした絵画として最古の作品が、今年見つかった。作品の中の行列には、現在はない8基目が描かれており、江戸後期ごろの作と考えられる。収蔵した市立博物館は「祭りの変遷がわかる貴重な資料をぜひ見てほしい」と展示している。
展示されているのは、「紙本著色高岡御車山祭礼行列絵巻屛風(びょうぶ)」。6曲1隻で、作者や詳しい制作年代は不明。絵画部分は2段に貼られ、縦約36センチ、横計約450センチ。表装は新しく、元は絵巻物か折本だった可能性がある。
京都の表具店から古美術商に渡ったものを6月に購入した。この祭りを描いた最も古い絵画は従来、博物館が所蔵する1883(明治16)年の木版画だった。
学芸員の仁ケ竹亮介さんによると、絵に描かれた御車山7基の上部を飾る「鉾留(ほこどめ)」や「本座人形」の意匠、行列の並び順は現在と同じだ。一方、前につき出た部分「轅(ながえ)」が今より細く、綱を付けて10人前後でひく形式や、幕の図案など異なる点もある。
最後尾の8基目は御車山ではなく、今はない坂下町の「大神楽山車(だいかぐらやま)」と考えられるという。「古文書の上で存在はわかっていましたが、ビジュアルが判明したのは初めて」。鉾留のデザインは「薄(すすき)に三日月」で、史料の記述通りだ。また、車輪の形から、1718(享保3)~76(安永5)年ごろの祭りの様子を描いたと推測される。
御車山などの装飾、人々の身なりや顔つきは、彩り豊かに細かく描写されている。ちょんまげに、裃(かみしも)やはんてんをまとう人の多くは笑顔で、休憩中のくつろいだ様子も見せる。
不思議な点もある。絵には文字が一切書かれておらず、作者や年代ばかりか、御車山の旗に記されるはずの町名すらない、と仁ケ竹さんは首をかしげる。
「1人だけ色が塗られていない人物もいて、絵として未完成。作者や発注者が病気になったり、亡くなったりして、中断したのかも知れません」。今後、絵画の専門家も交えて詳しく調査したいという。
10月27日まで、常設展示場お宝コーナーで観覧できる。無料。月曜休館(祝日の場合は開館し翌日休館)。(佐藤美千代)
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毎年5月1日に行われる関野神社の例大祭。豊臣秀吉が使った御所車を、加賀前田家2代・利長が町民に与えたのが始まりと伝わる。御車山行事は国重要無形民俗文化財で、ユネスコ無形文化遺産「山・鉾(ほこ)・屋台行事」の一つ。各町ごとに異なる装飾を施した7基の御車山は、国重要有形民俗文化財。
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