自転車並みの速度で北上している台風10号。

29日(木)午後1時現在の最新の進路予想では、今後さらにスピードを落とし、30日(金)にかけて九州を北上する見込みです。

その後、迷走しながら週明けにかけて列島を縦断する可能性があります。

28~29日にかけて九州各地で強い風が吹き、鹿児島県枕崎市では29日未明に最大瞬間風速51.5メートルを観測しました。この後、29日に予想される最大瞬間風速は九州南部で50メートルとなっています。

また30日朝までに予想される降水量は、多いところで九州南部で600ミリ、九州北部と四国で400ミリとなっています。


■台風の“東側” 離れていても大雨や暴風の恐れ

最強クラスの台風10号の最新情報を気象予報士の片平さんに解説してもらいます。

29日午後2時現在の、台風の位置から見ていきます。

【片平敦 気象予報士】「台風の動きがとにかく遅く、まだ九州のすぐ西にある状況です。29日朝8時ごろに、鹿児島県の薩摩川内市付近に一旦上陸しましたが、熊本県天草市のあたりの海の方を通過している形で、この時間は長崎県の島原半島の南の方にあって、九州の広い範囲が風速25メートル以上の暴風域に入っています」

29日午後2時ごろの宮崎県延岡市の映像を見ますと、川がかなり増水している様子がみられます。

【片平敦 気象予報士】「台風の暴風域は風の強さだけしか表していなくて、雨雲はそれよりも外に強いものがあるんです。しかも今回台風の動きがとても遅いので、雨水の量がだいぶ多くなります。大きな川は上流の小さい川の水を集めながら流れてきますので、雨のピークが過ぎた後で下流の方で一気に増水することもありますので、油断しないでいただきたいです」

宮崎県は台風より少し東にあります。
台風の少し東側というのは雨、風ともに非常に強くなるといいます。

【片平敦 気象予報士】「台風自体の渦巻と、台風を流す南風が合わさってしまうのが台風の進行方向の右側です。竜巻などの突風が起こりやすいのも、台風の右側やや右上側、つまり北東側と言われていますから、油断しないでください」

「このあと30日にかけての進路ですが、台風は一旦上陸したあとまた再び海の上に出たようですが、九州北部を横断して30日の昼間には、九州、中国、四国の間、瀬戸内海の海に出てくる可能性が高まってきています。とにかく速度が遅い状況で進んでいきますので、暴風や大雨が長引く恐れがあります」

「その先の進路を見ても、やはり動きが遅く、31日(土)朝の時点でも、四国や近畿の近くにいるような状況です。9月1日(日)の予想進路はあまり見かけないような状況なのですが、またここで動きが遅くなり、2日(月)~3日(火)にようやく東の方、北の方へ進んでいく形になります」

■とにかく速度が遅い

【片平敦 気象予報士】「コンピューターの風の予想を見ますと、あくまでコンピューターの予想でこの通りに台風が進むとは限らないのですが、台風とみられる渦巻きの周辺、紫や赤の矢印で、とても風が強いことが表わされています。台風が近づいてくるときは南風で、去った後は北風に変わって、一気に風が強まり暴風の恐れがある状況になります」

「予想される風の強さですが、29~30日と九州や四国地方は最大瞬間風速45メートル=1秒で50メートル走を走り切ってしまうぐらいの猛烈な風が吹く恐れがあります。
これから土曜日にかけて、暴風に警戒が必要な状況が続きますので、いま風が弱い地域でも決して油断をしないように早めの対策をお願いします」

風が強く吹いてる時に外は大変危険です。
早めの避難を心掛けてください。

■満潮時間に風や気圧が関係して高潮発生の恐れ

潮位が徐々に上がってくる時間帯に向けて、高潮の心配もあります。

【片平敦 気象予報士】「台風が近づいてくると、台風の周りの風や気圧の関係で高潮が発生する恐れがあります。29日夜にかけて満潮時刻を迎えるところが九州では多くなっています。いま台風の中心が近い熊本県のあたりで特に高潮の危険性が高くなってきます。これから台風が近づいてくるところで潮位が上がってきますから、高潮への厳重な警戒が必要な状況です」

また片平さんは、台風10号の気圧は弱まっているものの、高潮への備えが重要だと指摘します。

【片平敦 気象予報士】「中心の気圧が一時に比べれば弱まってきてはいますが、それでも通常に比べると気圧が随分低い状態です。
『気圧』の圧がかかってる時は海面は抑えられてるんですが、台風のような強い低気圧がくると圧が下がって、海面が上がってしまう。
もし防潮堤を超えてくると、海の水が無尽蔵に陸地に流れ込んでくるという非常に危険な災害が高潮です。今後の潮位の情報にも気をつけてください」

■「ノロノロ台風」「迷走台風」

【片平敦 気象予報士】「一つポイントが、31日(土)~9月1日(日)にかけて、近畿のあたりでまた速度が減速してしまう可能性があることです」

「なぜかというと、台風は自分で動くことはできません。周りの風に流されます。
まず1つ目、『夏の太平洋高気圧』で、高気圧というのは、時計の針の向きに風が吹いています。この風に乗って台風が動いてきます。
台風に高気圧がぐっと張り出してきたので、台風は南の方から進んできます。
そしていま台風は高気圧のすぐ西にあるような格好です。

この後この北側を進んでいくところなんですが、近畿の近くに来るところになって、太平洋高気圧は弱まってしまい、風があまり吹かなくなってしまい、台風の動きが遅くなります。

日本の近くの代表的な風である偏西風。これに乗ると一気に速度が上がるんですが、今はまだ北海道の方を吹いているということで、偏西風からは離れている。
太平洋高気圧も離れてしまうということで、台風の動きが遅くなってしまって、もしかするとぐるっとループする可能性があるというコンピューターの予想もあるぐらいで、動きの予想が難しくなっています」

「2日(月)ごろになるとまた高気圧が張り出して、偏西風がちょっと緯度が低いところへ降りてくるということで、少しスピードを上げていくんじゃないかという見立てになっています」

台風は北上または東に向かうイメージがありますが、今回の台風10号は西に戻る時間帯があったり、迷走する時間帯があるかもしれないということです。

台風の勢力は、上陸して陸地を進めば弱まりますが、また海に出たら強まる恐れがあります。

【片平敦 気象予報士】「この後、陸地から瀬戸内海、場合によっては太平洋に行くことがありますが、この周辺の海水温が30度前後ということで、台風がまだ強くなるような暖かさです。
台風が陸地に進むのか、海に進むのかによって強さに関わってくるかと思います」

■離れた場所でもかなりの雨が降っている

今回の台風10号は「離れていても危険」、離れた場所でもかなりの雨が降っています。

【片平敦 気象予報士】「台風の強風域、暴風域にとらわれず、離れた場所でも大雨に気を付けてもらいたいです。

29日未明からの雨雲の様子を見ますと、台風本体の雨雲の東にずっと伸びている形で雨雲が発達したものがあります。

南から次々と発達した雨雲が流れ混んできていて、台風の中心は熊本県や九州の方にあるんですが、四国、近畿、東海そして関東の方にも黄色や赤色で示された発達した雨雲があります。

29日午後1時頃、静岡県に雨をもたらした雲は、台風の本体ではありませんが、台風の周りを回る風に乗って南の方から湿った空気がたくさん流れ込んできているんです。これが山にぶつかっているところで特に雨脚が強まっています」

「特に台風本体の近くで雨の量が多くなっています。宮崎県内では29日午後1時までの3日間ぐらいに降った雨の量が800ミリを超えています。
平年の8月1カ月の1.5倍ぐらいの雨が数日で降っています。
熊本県内でも場所によっては500ミリ近く雨が降っていて、平年の8月の1.2倍ぐらいです。
1か月分以上の雨が短い間に降っていますので、山も崩れやすくなり、川も溢れやすくなる、非常に危険な状況です」

13年前、2011年には紀伊半島で大きな被害をもたらした台風12号がきました。

この台風のときも、時速10キロぐらいで自転車ぐらい、ゆっくり進んだために紀伊半島では3日間で場所によっては1600ミリ程度の雨が降りました。
大阪の年間雨量が1400ミリといわれているため、相当な量です。

このときも台風本体は兵庫県のあたりを進んでいましたが、離れた紀伊半島に大雨をもたらしました。

【片平敦 気象予報士】「その時も台風本体の中心は、四国から兵庫のあたりに進んでいった。ちょっと離れた右側のところ、紀伊山地の東側や南側で雨の量が多くなりました」

台風の東側の地域で雨が降り続けると予想されます。

【片平敦 気象予報士】「この後の雨の予想、台風が近づいてくると、その右側のエリアもどんどん東に移っていく形になります。コンピューターの予想なので前後ずれることもありますが、やはり西の方から東の方に発達した雨雲が移っていく状況です。

これから数日まだまだ雨が降る予想で、これから30日昼までに降る雨の量、四国地方や九州北部地方、九州南部こちらでまだ400ミリ。

すでに800ミリぐらい降ってるところがあるのに、まだ400ミリという平年の1カ月分ぐらいの雨が追加で降ってしまうということで、一層危険性が高まります」

2018年の台風21号の際には、関西で数日間電気が止まった地域もありました。

暑いこの時期に停電になるとクーラーが使えなくなりますので、避難できるところがある方は避難も検討してもらいたいです。

台風が過ぎて暑さがやってきた時に電気が通っていないと、熱中症などが心配されます。

【片平敦 気象予報士】「来週、天気が回復して気温も上がります。また台風は熱帯生まれなので、雨が降っていてもすごく蒸し暑い空気をもってきます。雨が降っていても30日の予想最高気温34度というところもあります」

雨に注意しなければならない期間が長くなっています。

【片平敦 気象予報士】「台風本体が近づくタイミングが土日ぐらいにかけてで、もしかすると月曜まで大雨の可能性が続く状況です。
最新の気象情報を確かめて、危険な場所には近づかないようにして、身の安全確保を最優先で行動してください」

■最新情報は気象庁の『キキクル』で確認を

災害の危険性が高まっているかどうか、最新情報は『キキクル』という気象庁のサイトで見ることができます。

【片平敦 気象予報士】「お住まいの地域でどれぐらい大雨による土砂災害などの危険性が高まっているか確認できます。
手元のスマートフォンやパソコンで、カタカナ『キキクル』で検索していただくと出てきます。気象庁のホームページですので無料で見ることができます。

色合いが白、黄、赤、紫、そして黒とあり、5段階で危険性を表している図です。

実際に見てみると、危険性が高い赤や紫の表示が各地に出ていますので、台風から離れていても警戒を続けていただきたいと思います」

(関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」2024年8月29日放送)

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