ハウスでドラゴンフルーツを収穫する星一明さん

 午後8時ごろ。直径30センチにもなる白い花が開き、ハウスの中が甘い香りで満ちていく。栃木県那珂川町で「星の見える丘農園」を経営する星一明さん(59)は、その幻想的な姿にいつも心を奪われる。魅惑の花は、レッドピタヤという種のドラゴンフルーツ。花は一晩でしおれるが、約40日後に楕円(だえん)形の深紅の実を付ける。今季最初の収穫の日、ハウスにずらりと並ぶ鉢のあちこちに、ソフトボールくらいの大きさの完熟の実がたわわにぶら下がっていた。  中南米原産のサンカクサボテン。フランス人が持ち込んだベトナムで盛んに栽培され、果実の表面が竜のうろこに似ていることからその名が付いたとされる。国内のスーパーに並んでいるのはベトナム産が多いというが、沖縄県や鹿児島県などでも栽培されている。  建設会社勤務から転身し、亡父のブドウ園を継いだ星さんが、ドラゴンフルーツと出合ったのは5年前。同町が誘致した木質チップによるバイオマス発電施設でボイラーから出る蒸気を生かした農業を考えていた時に、ボックス栽培(専用鉢)の研究会を主宰している宇都宮市の男性が沖縄で仕入れたレッドピタヤの茎を譲り受けた。  耕作放棄地にハウスを二つ建て、地元の鹿沼土を混ぜてつくった鉢に挿し木をすると、緑色の茎の先から出た新たな茎がぐんぐん伸びた。冬場は蒸気の熱でハウスを最低10度以上に保ち、土の状態を見ながら手作業で水をやる。南国産だが近年の酷暑で一部が枯れた経験から夏場は遮光ネットをかけ、外気を入れて熱を逃がす。3年目に初収穫。現在は7月から翌年1月までに年2回、70鉢から約700キロを収穫し、近隣の道の駅や直売所で販売する。愛好者の口コミで広がり、東京から買いに来る人もいる。  切っても深紅が鮮やかな果肉はみずみずしくほんのり甘い。種によって果肉は白、黄色などさまざまで、ポリフェノール、ビタミン類やミネラルなどが豊富で栄養満点だ。食べ方などを発信している日本ドラゴンフルーツ協会(東京)の番場万有美会長(59)は「生命力の強さが魅力。サラダやスイーツなど、子どもから高齢者まで楽しめる健康的な果実」と話している。  文・写真 五十住和樹

◆味わう

 星の見える丘農園では、レッドピタヤにバナナ、ヨーグルトを混ぜてシャーベット状にしてブドウやイチゴなどをトッピングした「ドラゴンボウル」=写真=を9月23日まで約800円で提供する。バナナの甘さが引き立つ真夏のデザートだ。レッドピタヤは近隣の道の駅などで1個500~600円で完熟した実を購入できる。


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