三重県多気町の動物園「ごかつら池どうぶつパーク」が2024年6月、リニューアルオープンしました。新園長に“スペシャリスト”を迎えて、ハプニングがありながらも準備を進め、「本物に出会える」動物園に生まれ変わりました。
■“昭和の動物園”のリニューアル…スペシャリストが新園長に
多気町の「ごかつら池どうぶつパーク」は1993年に開業し、クマやヒョウ、ライオン、ゾウなど、人気の大型動物を三重県で見ることができると、地元を中心に多くの人が訪れました。
この記事の画像(29枚)しかし、施設の老朽化が進み、お客さんは年々減少。オープンから30年を機に2024年、改修を決めました。
今回のリニューアルに際しては「新園長」として“成功請負人”を招聘しました、高橋文彦さん(49)です。
全国的に知られる「よこはま動物園ズーラシア」の立ち上げに携わり、アフリカで野生動物の保全活動にも長年携わってきた、この道のスペシャリストです。
ごかつら池どうぶつパークの新園長 高橋文彦さん:
やばいところに来ちゃったなという感じです(笑)。正直なところ、昭和の本当に昔の“あるある動物園”で、リニューアルというか動物を飼育するのが難しいかなというのはすごく思いましたね。
園のスタッフは経験の浅い若手が中心で、コンクリートで囲まれた狭い空間で動物を飼育する、昔ながらのスタイルにも戸惑ったといいます。
ごかつら池どうぶつパークの新園長 高橋文彦さん:
(若いスタッフたちは)何とかしたいんだけど、どうにもこうにもうまくいかないということだった。じゃあそこで何か、自分が今までの経験や知識で協力できないかなというのがスタートですね。
■目の前で“マウント”取り合うヤギの戦いが…コンセプトは「リアルを感じられる」動物園に
オープンまで約1カ月を迎えたこの日、高橋さんが考える新たな動物園のコンセプトを聞きました。
ごかつら池どうぶつパークの新園長 高橋文彦さん:
ただの見世物だけじゃなくて、本物がここにいて、そのリアルさを感じてもらいたいですね。
今回のリニューアルで、一番こだわったのが「巨大スロープデッキ」です。
ごかつら池どうぶつパークの新園長 高橋文彦さん:
メインになるような場所にデッキを作って、そこを登りながら動物が現れてくるというのを、演出をしたかったというのはありますね。ヤギがいたりするんですけど、ヤギって家畜なので、(一般的には)そんなに広いスペースで展示しないんですけど、この展示場の広さは他にないですね。
動物たちの生態がリアルに見られるようにと、他の動物園には無い、広い展示スペースにしました。
この日はオスのヤギがマウントを取り合っている様子が、目の前で繰り広げられていました。
そして獣道をヤギが走り抜ける様子も…。
ごかつら池どうぶつパークの新園長 高橋文彦さん:
すごく迫力がありますよね。ヤギはこういう斜面が大好きなんですよ。
そして、別の場所ではメス同士の戦いも起きていました。
ごかつら池どうぶつパークの新園長 高橋文彦さん:
これはリアル、本当にここに来ないとわからないですよね。スマホとか図鑑とかでは見られない迫力があります。
■「業者任せにしない」…“手作り”で自然に近い展示に
動物が過ごすスペースなどを「業者任せにせず、自分たちでできるところは手作りで」というのもコンセプトのひとつです。
前日の夜に完成させたというワオキツネザルの部屋。配置されている植物も自分たちでホームセンターで買ってきたといいます。
以前はコンクリートに囲まれていましたが、自然の環境に近い、土と木で囲まれた部屋に模様替えしました。
カピバラが過ごすスペースは、本来生息している水辺に近い環境にと、プール付きの部屋に改修。
男性スタッフ:
(以前は)プールが無かったので水をためる時間とか、そういうところとか(作業が)倍以上になっているので、探り探りでやっている。
まだ手探りではありますが、リアルにこだわる新園長の思いは形になりつつありました。
男性スタッフ:
環境が今までと全然違うので。生息地に近いような場所にしているので、そこで暮らしていた状態が見られるんじゃないかなと思いますね。
ごかつら池どうぶつパークの新園長 高橋文彦さん:
いや~素晴らしい、ちゃんと話せるね。ちょっと成長したなっていう、素晴らしい!
若手スタッフも、日々成長しています。
■順調に見えた準備も動物の脱走や行方不明が相次ぐ“事件”も
そして、動物園の人気者、オグロプレーリードックの「むちこ」は、土のある部屋へとやってくると、ものすごい勢いで土を掘り始めました。
もともと土を掘る習性があるといいます。
ごかつら池どうぶつパークの新園長 高橋文彦さん:
掘りたいんだなあ。本来あるべき姿が見えるから、すごくいいよね。これをやっちゃうとね、飼育係が辞められなくなる。
女性スタッフ:
達成感が、毎日の達成感がすごい。
準備は順調に進んでいるように思われましたが、オープンの25日前の6月4日、“事件”は起きました。 気持ち良さそうに土を掘っていたプレーリードックの「むちこ」が見当たらなくなりました。部屋を隅々まで探しても見つかりません、どこからか逃げ出したのでしょうか。
ごかつら池どうぶつパークの新園長 高橋文彦さん:
いなくなっちゃいましたね、まさかの展開ですね。
突然姿を消した人気者を、スタッフ総出で園内を探しましたが、この日は結局見つかりませんでした。
そして今度は、ヤギが柵の外で見つかりました。
柵の中の土が盛り上がって高くなっていたところからジャンプして、柵の外に出たようです。
急遽、地面をなだからにして対策を施しました。
■むちこも無事発見…新たな仲間も到着
オープンまでおよそ10日を迎えた日、施設のリニューアル工事も終わり、新しい仲間がやってきました。動物園の目玉にしたいという、白いメスと茶色のオスのアルパカです。
そして、プレーリードッグの「むちこ」も無事見つかっていました。
ごかつら池どうぶつパークの新園長 高橋文彦さん:
見つかりましたよ。巣を作っていて。ホントに見えない地下まで掘っていて、そこにいました。ヘタしたらこの土で埋まっちゃっていて、死んでいるかなと思っていたんですよ。改めて動物の本能というかいうんですかね、予想外のことが起きるので。
高橋さんもホッと一安心した様子でした。
■「別の動物園みたい」…初日は700人超える来園でリニューアル大成功
そして迎えたリニューアルオープン当日の6月29日、朝から開園を待ちわびる家族連れで行列ができていました。
34種112点の動物たちを展示し、こだわりの「“リアルな展示」も好評で、ヤギのエサやり体験も子供たちから人気を呼んでいました。
女性客A:
すごい、別の動物園みたいです。ビックリです、めちゃめちゃキレイになりました。
男性客:
実際に触れるところが、カメとかも触れたりとか、実際体験できるのは良いなと思いました。
女性客B:
なんか子供たちが見やすいし、動物に距離が近いので嬉しいです。
初日は予想をはるかに上回る、700人以上のお客さんが来園し、大成功の滑り出しとなりました。
ごかつら池どうぶつパークの新園長 高橋文彦さん:
まずはホッとした感じですかね。やっとちょっと新しい一歩が踏めたというのはあるんですけど、ホッとの方が大きいかな。
無事リニューアルオープンを成し遂げた高橋さんの次の目標は、「ゾウ」を飼うことです。
ごかつら池どうぶつパークの新園長 高橋文彦さん:
ここでゾウを飼いたいですね、アフリカゾウ。夢です、夢です。壮大な夢があります。
2024年8月6日放送
(東海テレビ)
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