固定資産税の納税通知書が届いたら、どこを見たらよいのでしょうか(画像:SRT101/PIXTA)

「自宅はもうすぐ築40年ですが『固定資産税』が全然下がりません……なぜでしょうか?」

こんなお悩みが、とあるサイトに載っていた。

実はわが家も、もうすぐ築25年になるが、ここ15年ほど固定資産税と都市計画税の納税額があまり変わっていない。これには、固定資産税の計算方法に理由がある。

折しも、2024年度は固定資産税の評価額を見直す、3年に一度の「評価替え」が行われる。4~6月ごろに届く納税通知書によって新しい税額が通知される。物価も上がり、社会保険料なども上がる今、納税額の内容をしっかり確認しておきたい。

固定資産税評価額はどうやって決める?

「固定資産税」は、その名の通り固定資産を所有する人にかかる税金のこと。固定資産は、土地や建物のほか、船舶や機械などの償却資産も対象になる。その固定資産を1月1日時点で所有している人に納税する義務がある。

固定資産税と一緒に「都市計画税」の納税を求められる人も多い。

都市計画税は、市町村などの地方自治体が、それぞれの地域の都市計画事業などに応じて、徴収の有無を自主的に決めている。

課税されるのは、都市計画法による「市街化区域内」の土地や建物を所有している人。市街化区域とは、すでに市街地を形成している区域、またはおおむね10年以内に市街化を図る区域のことで、道路や下水道などの公共施設を整備するための費用に使われる。

わが家のように、所有する土地や建物が市街化区域にあれば、両方の税金をまとめて納税することになり、固定資産税・都市計画税納税の通知書が届くのだ。

固定資産税も都市計画税も、税額を決める基になるのは、固定資産課税台帳に登録されている価格=「固定資産税評価額」だ。土地や建物の固定資産税評価額は3年ごとに評価替えが行われることになっている。

固定資産税評価額は、各市町村(東京23区の場合は東京都)が、国が定めた「固定資産評価基準」に基づいて、それぞれの固定資産の価格を決め、固定資産課税台帳に登録している。

土地については、地価公示価格の70%を目安に、それぞれの条件に応じて決められる。建物については、新たに建築した場合の価格に経年による減額を補正して算定する。

さて、冒頭の固定資産税が変わらない点について考えてみよう。大きいのは地価の上昇と建築費用の上昇だろう。

筆者の自宅マンションの例で見ると、2024年度の土地の固定資産税評価額は10年前の2014年度と比べると1.4倍に上昇。だが建物の評価額は1%下がっただけなので、10年前よりも固定資産税納税額は増えている。

地価の上昇は、マンションを売る場合には大きなメリットだが、所有して住み続けている分には増税になってしまう。

新築マンション購入5年で固定資産税が急増?

「ある年度で突然、固定資産税の税額が急激に上がって、びっくりした」ということがよくある。実は、固定資産税の額が急激に上がるタイミングがあるのだ。もちろん、理由がある。

固定資産税や都市計画税には、いくつかの軽減措置がある。中でも、住宅については軽減措置が多い。住宅用の土地は、固定資産税評価額を引き下げる軽減措置があり、特に一戸建てのような小規模な住宅地(面積200㎡以下)ではより多く軽減される。

さらに、新築住宅の固定資産税では、一般的にマンションで5年間(長期優良住宅等の場合は7年間)、一戸建てで3年間(長期優良住宅等の場合は5年間)、「建物(家屋)」の固定資産税額を半額にする軽減措置がある。

買った当初はこのことを理解していたのに、しばらく経つうちに忘れてしまい、軽減措置が切れたことによる増額に驚く、といったことが実際に多いのだ。

固定資産税評価額を基に、土地の軽減措置や負担調整(評価替えで土地の固定資産税評価額が急激に上昇した場合に徐々にその額に近づける調整)などを行い、課税対象となる「課税標準額」を定める。この課税標準額に以下の税率をかけて、それぞれの税額が決められる。

・固定資産税=固定資産税課税標準額×税率(1.4%)
・都市計画税=都市計画税課税標準額×税率(0.3%)
※税率は地域によって変わる場合がある

固定資産税額+都市計画税額 - 軽減額(新築住宅の減額やその他の減免など)が年間の納税額となり、それを4回に分けて納税する。その詳細を記載したのが納税通知書だ。「固定資産税評価額」と「固定資産税課税標準額」は、似ている用語だが、意味が違う点に注意しよう。

納税通知書が届いたらどこを見る?

2024(令和6)年度版の納税通知書が届いたら、まずは「固定資産税評価額」をチェックしたい。「評価額」や「価格」という項目を探そう。ちなみに東京23区の場合は「価格」と記載されている。

■固定資産税・都市計画税 納税通知書の例(一部)

【土地】

【家屋】

(画像:東京都主税局の固定資産税・都市計画税通知書の案内を参考に東洋経済作成)

土地の「評価額」や「価格」の項目は、マンションの場合、一筆全体つまり敷地全体の評価額が記載されているので、そのうちの持ち分が自分の土地の評価額になる。なお、一筆とは登記上の土地の単位で、登記簿上の1つの土地のこと。

また、家屋についても「評価額」や「価格」の項目は、マンション1棟の評価額になっているので、床面積割合などで按分したものが自分の家屋の評価額になる。基本的に家屋の場合は、画像例の「価格」の右側にある「課税標準額」が各戸の評価額に該当する。

「納得がいかない」不服は申し立て可能?

ところで、通知書を改めて見て、その評価額に納得がいかない場合はどうしたらよいのだろう?

まず、見方が分からないなどの場合は、通知書に同封された案内の問い合わせ先に聞いてみよう。また、評価額に不服がある場合は、「固定資産評価審査委員会」に審査を申し出ることになる。固定資産評価審査委員会は、こうした審査の申し出に対して審査決定を行うために、法律に基づいて設置された行政委員会だ。

評価額は3年ごとに評価替えがあり、2024年度に評価替えすると2025年度、2026年度はその評価額が据え置かれる。そのため、評価替えの年でないと審査の申し出ができない。特段の事情がない限りは、いつでもできるというわけではないのだ。ちなみに、東京23区の固定資産税については、2024年4月1日から9月10日までとなっている。

また、評価額のほかについて不服があれば、市町村長などに審査請求をする流れになる。

不服があり審査を申し出るときの流れ(出所:東京都主税局「東京都固定資産評価審査委員会」)

さて、筆者はこの原稿を書くために、わが家の固定資産税等納税通知書をじっくり見ることになった。

これまで、計算は合っているだろうと最終的な税額しか見ていなかったので、深く反省した次第だ。2024年度分については、通知書が届いたらしっかり見ようと思っている。

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