全国の公立小中学校・高校のうち、約8割は十分なインターネット通信速度が確保されていない――。文部科学省が24日に公表した学校のネットワーク環境に関する調査結果で、そんなデータが明らかになった。国は「GIGAスクール構想」で児童・生徒が1人1台の端末を使えるよう整備を進めてきたが、学校の通信速度によって授業のスムーズな進行に支障が出る可能性もあり、文科省は自治体に十分な通信速度の確保を促す。
文科省の調査は昨年11~12月に実施。全国約3万2000校のうち固定回線でネット接続している各学校で、教室のアクセスポイントに児童・生徒向けの端末を接続し、通信速度を測ってもらった。さらに、複数のクラスで動画教材の視聴やネットを介した資料の共同編集といった作業が同時に行われることを想定し、推奨される通信速度の目安を学校規模ごとに設定した。
その結果、有効回答を得られた3万89校のうち、推奨速度に達している学校は6503校(21・6%)にとどまったという。推奨速度に届かない学校は大規模な学校で多い傾向があり、児童・生徒数841人以上の学校で推奨速度に達したのは1382校のうち29校(2・1%)だった。児童・生徒数を考慮せずにネット事業者と回線契約を結んでいる可能性があるという。
東京都の多摩地域の市にある1000人規模の小学校では、ある学年が端末を活用して通信量が増えると見込まれるときは、別の学年が端末の利用を控えている。管理職の教諭は「全員が一斉に端末を利用することがないように工夫しているが、クラス担任から『通信速度が遅い。何とかならないですか』という訴えは出ている」と明かす。
ネット事業者との契約は原則、自治体が結んでいる。この市教委の担当者は「学校規模にかかわらず同じ速度の回線を各学校につなげている。学校現場で不便だという声が大きいようならば通信速度の引き上げも検討する」と話した。
文科省の担当者は「端末の利用状況によっては、推奨速度に達していなくてもただちに授業に支障が出るわけではない」としつつ、「機器の性能や設置場所なのか回線契約なのか、まずは速度が上がらない各自治体に調べてもらいたい」と求めた。一定の速度を確保できる回線契約には費用がかかるため、近隣の自治体が共同して発注し、安価に回線契約を結ぶ方法などを共有する考えも示した。【斎藤文太郎】
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