観光列車「SL人吉」などとして客車をけん引し、今年3月に引退したJR九州の蒸気機関車「8620形・58654号機」(通称・ハチロク)が3日のイベントを最後に仕事を終えた。今後は熊本県人吉市に無償譲渡される予定で、車両はいったん北九州市のJR九州の車両基地で保管後に人吉市へ移り、11月18日ごろ一般公開の予定という。
車両基地の小倉総合車両センターで2日にハチロクの見学会が開かれた。全長約17メートル、高さ約3・8メートル、重量約47トンの車両を間近で見られる有料イベントの一部。3日までの計4回のうち、1回目には愛好家ら約20人が参加し、動輪を回転させるための部品「主連棒」の取り付けや、運転台を見学した。
ハチロクを撮影し続けている熊本県玉名市の女性会社員(48)は「黒くて大きくて武骨な感じ。それでいて煙や蒸気を吐いて柔らかい。角度によって表情を変えるのが魅力」と話した。北九州市八幡西区の男子大学生(22)は「引退後は見られなかったので今日は貴重な機会。いつかまた走る姿をみたい」と期待した。
ハチロクは人吉市に無償譲渡される。市によると、小倉総合車両センターでいったん分解し、専用トラックで運搬した後に組み立てる。市はハチロクを間近で見学できるツアーも計画する。1922(大正11)年11月18日製造のハチロクにちなみ、人吉駅近くでその頃、お披露目をする予定。
2025年度以降に駅近くの駐車場に格納庫を建設。約60メートルの線路も敷設し、観光客らが動く姿を楽しめるような取り組みを計画している。人吉市の担当者は「置いておくだけでは動かなくなるので、動態保存にする」と説明した。
JR九州によると、1922年製造のハチロクは長崎県など九州各地を巡り、75年にいったん運行を終了。同社発足後、観光振興などの目的で88~2005年に豊肥線で観光列車「SLあそBOY」として運行した。09年からは肥薩線で観光列車「SL人吉」として運行したものの、20年の九州豪雨で路線が被災して運休を余儀なくされた。
その後は熊本―鳥栖(佐賀県)など鹿児島本線を走ったが老朽化などを理由に24年3月23日に運行を終了。翌24日に熊本県の八代駅で開かれた沿線関係者向けの特別運行の式典でJR九州の古宮洋二社長が人吉市に無償譲渡することを表明していた。【下原知広】
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