特集は選手の命を守るプロジェクトです。ラグビー合宿の聖地・菅平高原(長野県上田市)で、「AED」・自動体外式除細動器を全てのグラウンドで使えるようにする取り組みが進められています。実際に命を救ったAEDによる応急処置が切っ掛けで始まりました。
■ラグビー合宿の聖地で救命措置の講習会
8月15日
ラグビー合宿の聖地として知られる菅平高原。毎年、夏の間は約7万人を受け入れていて今年も多くの若者が汗を流しています。
そうした中ー
講習会:
「1・2・3・4…」
大学のラグビー部員が取り組んでいるのは心臓マッサージと人工呼吸、そして、AEDの操作。
先日、救命措置の講習会が開かれました。菅平高原で進められている「SAFEプロジェクト」の一環です。
SAFEプロジェクト・大伴茉奈さん(桐蔭横浜大学スポーツ科学部):
「みんなが安全に安心してスポーツできるように、環境を整えていくきっかけになればいい」
最終目標は100面以上ある「菅平全てのグラウンドでAEDを使えるようにすること」。
プロジェクトは、実際に命を救うことができた応急措置を切っ掛けに始まりました。
■ラグビー部員が「心停止」の状態
2021年8月、練習試合中に大学のラグビー部員が突然、倒れました。駆け寄ったレフリーが確認すると「心停止」の状態。すぐに応急処置が始まり、近くの事務所からAEDも届けられました。処置に当たったレフリーがたまたま医師であったこと、そして、たまたまAEDが近くにあったことが幸いして、部員は一命を取り留めました。
■「突然死」をどう防ぐ
スポーツ中の突然死をどう防ぐかー。
当時、菅平高原にあったAEDは41台。多くはホテルなどにあり、グラウンドですぐに使える状況になっていませんでした。
そこで―
SAFEプロジェクト・大伴茉奈さん(桐蔭横浜大学スポーツ科学部):
「100面を超えるグラウンドがあるので、全部のグラウンドにAEDを設置しようと」
状況を知ったスポーツ科学の研究者たちが日本ラグビー協会などの支援を受けて「プロジェクト」を立ち上げ、AED105台を用意しました。
これが各宿泊施設に設置されました。
■AEDをグラウンドに
菅平高原ホテルやまびこ・高森実穂さん:
「試合(や練習)に行く前に、ここにAEDが置いてあったら持っていく。夕方、練習・試合が終わったら持って帰ってくるのを各チームにお願いしています」
宿泊先からAEDを持ち出してグラウンドに置くことがルール化されました。
「ホテルやまびこ」に宿泊していた神奈川の大学ラグビー部もこの日、グラウンドの脇に置いて練習していました。
菅平高原ホテルやまびこ・高森実穂さん:
「元々、宿の方にもAEDはあるんですけど、外のグラウンドで何かあった時にホテルのフロントまで取りに来るのにやっぱり距離がある。安心して合宿してほしいので、プロジェクトで配備してもらい本当にありがたい」
■安全に安心してスポーツできるように
講習会:
「AED持ってきました」
AEDがあっても実際に使えなくては意味がありません。そこで、2023年から講習会を開催。救急救命士を目指す学生などが講師となり、合宿中に部員たちにAEDの使い方などを体験してもらっています。
講習を受けた学生:
「(ラグビーは)人と人とがぶつかるスポーツなので、何が起こるかわからない面から、命を救う取り組みを、それぞれが意識をもって行っているのはとても大切」
「プレイヤーも、もっと安心してプレーできるのでは。菅平だけではなく、いろんな所でもっとAED普及するといい」
スポーツを、より安全に―。
関係者は取り組みや意識が菅平から広がっていくことにも期待しています。
SAFEプロジェクト・大伴茉奈さん(桐蔭横浜大学スポーツ科学部):
「ラグビーの人たちが聖地として集まってくる場所、それを日本各地に持ち帰ってほしいというのが一番の目的。みんなで一緒に安全をつくっていくという形を目指していけたらいい」
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