厚生労働省は5日、特定の地域や診療科への医師の偏在是正のための対策を話し合う部局横断の省内会議の初会合を開いた。厚労省は年末までに総合的な対策パッケージの策定を目指しており、8月には検討中の対策を骨子案として公表。今後、具体的な方策を取りまとめる。
全国の医師数は少しずつ増えており、2022年末で約34万人。人口減少が進み、厚労省の推計では、早ければ29年に全体の医師需給は均衡するとされ、医師数だけで言えば医師不足は解消する。
ただ実際には、医師が多い地域と少ない地域が存在する。人口あたりの医師数や将来の人口動態などを考慮した指標では、東京都や京都府などは医師が多く、岩手や新潟県などでは医師が足りない。都道府県の中でも偏りは大きい。また、診療科の偏りもあり、外科や産科などは医師数の減少が続いている。
厚労省は、地域で働くことを条件とした医学部入試の「地域枠」の拡大や、都市部で専門医の数に上限を設定する対策を取ってきた。それでも医師偏在は解消しておらず、武見敬三厚労相は4月、「前例にとらわれない対策を検討すべきだ」と発言。日本医師会(日医)の松本吉郎会長も「もう一段ギアを上げる必要がある」と危機感を共有する。
ただ手法によっては医師らの反発を招く可能性がある。財務省の財政制度等審議会が5月、地域によって診療報酬に差を付けることを提案すると、日医はすぐに「極めて問題の多い提案」などと拒否感を示した。日医は「一つの手段で解消するような『魔法のつえ』は存在しない」として、医師少数地域での開業支援などを挙げ、対策推進のため1000億円規模の基金創設を提案する。
厚労省は年末までに対策パッケージを策定し、25年度予算案への計上や来年の通常国会での関連する法改正を目指す。都市部での新規開業や、臨床研修を終えた直後に美容医療など自由診療に従事することについて規制を強化することを検討している。25年度予算の概算要求では医師偏在対策などに915億円を計上している。
5日の会議の冒頭、武見厚労相は「もはや待ったなしの課題。(医師偏在の)解消なしに国民皆保険制度を維持することはできない。強い覚悟と決意を持って精力的な検討をお願いしたい」と述べた。【松本光樹】
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