東日本大震災特別企画「ともに」です。宮城県に「災害時学校支援チームみやぎ」という組織があります。県内の教職員で構成されていて、災害が起きた時、被災地の学校再開を支援します。今年1月に発生した能登半島地震で現地に派遣された教員の1人、津守大智さんは多賀城高校災害科1年生の担任として、生徒とともに、命と暮らしを守る防災のあり方を考えています。

津守大智さん、27歳。多賀城高校災害科学科1年生の担任の先生です。
福島県本宮市の出身。中学2年生のころ、震災を経験しました。被災後も授業を継続した先生たちの姿を見て、自分も人の役に立てるようになりたいと、教師を目指しました。

この日、1年生40人を引率し、栗駒と気仙沼に野外実習に出かけます。栗原市にある栗駒山麓ジオパークでは、2008年に発生した岩手・宮城内陸地震で地すべりが起きた現地の視察などを受け入れています。

「荒砥沢地すべり」幅900メートル、長さ1300メートルにわたって発生した大規模な地すべりで、移動した土砂の総量は約7000万立方メートルにも達しました。

ガイドの解説
「上は溶結凝灰岩といいます。それが集まってまた溶ける、自分の熱で。冷えて固まる時に体積を縮める。そうすると重くなる。その下は軽石。君たちが軽石だとしてください。頭の上に漬物石をのっけてください。足元はスニーカーだけど、バナナの皮を大量に重ねたところに乗っていました。その時に起きたのが、君たちが生まれた年、2008年に起きた岩手宮城内陸地震。その特徴が4022ガルという地震の最大加速度。こっちの方からドンと突かれる感じ。グラっといってズルっと滑ったのが荒砥沢地すべり」

気仙沼市にあるリアスアーク美術館。この美術館には東日本大震災の記録と津波の災害史が常設展示されています。明治三陸大津波の高さより高い位置にあった照明器具がもぎとられた、鉄柱の写真。

生徒「8.5以上の高さの津波が…」
津守さん「あとはこれをどう使うか、波高標識を。これがあるから大丈夫になるのか。あの時こうだったから、次はこうかもしれない。」
生徒「やっぱり予測が大事ですよね」
津守さん「波高標識を貼るだけじゃだめで、あの時あそこまで来たから今回はそれを超えるかもしれない。避難行動につなげていく意識を作るためのものだから。この使い方によって意味が変わってくると生徒は気づいていました。とてもいい気づきかなと思います」

津守先生は、宮城県の「災害時学校支援チームみやぎ」に登録されています。災害が起きた時に、現地の学校再開を支援するメンバーで、現在、県内の教職員約160人が登録されています。去年登録された津守先生は、1月1日に発生した能登半島地震で能登町の能都中学校に支援に入りました。活動の大半が片付けや清掃でしたが、授業をする機会もありました。中学生の頃、震災で避難生活を送った経験のある津守先生。能都中学校の生徒に、当時感じたことなどを伝えました。

津守大智さん
「地震の前よりも落ち着かない生徒が多いと聞いていたんです。それは自分も中学生の時に経験した感覚であって。それはおそらく正常な反応です、というような話もさせていただいた」

先月、津守先生は今年度の災害時学校支援チームみやぎの養成講座で、能登に派遣された経験を伝えて欲しいと頼まれました。約40人の受講者に語りかけます。

津守大智さん
「当時中学生だった自分だからできる支援をしたいなと思いました」

中学2年生の時、被災しながら感じていたことを授業で伝えました。

「いろんな感情が湧き起こっていました。もちろん恐怖とかイライラとかもあったんですけれども、無力感や高揚感もあったんですね。言葉が悪いかもしれないですけど、ワクワク感みたいなのもありました。これはなんか自分だけなのかなと。俺やばい人なのかな、みたいにも思っていたんです。なので、実際に自分の気持ちを伝えて、同じ思いになっている子がいたら安心してくれるのかなと思って、この狙いで授業をしたことになります。ただ学校支援については気持ちの押し付けにならないように注意するのと、ニーズに合わせた支援をするというのは本当に強調してお伝えしたいなと思います。こういった研修を受けた先生方が被災地でお手伝いができるのはすごくいい。あの時にいろいろしていただいた恩返しができるので。被災地のニーズに合わせて押し付けにならないように、どうしても行くと、あれもやりたい、これもやりたいっていうふうなところに目がつくかもしれないんですけれども、あくまでもその被災地の方々がこれお願いしたいです、というところをしっかり聞いてできるといいのかなというふうに思いました。実際に学校再開のプロセスを学んだ支援チームの先生がいることで、宮城県内でも次また災害が起きた時に、震災は経験していなくても、支援チームで学んだことがあれば、自校の学校再開とかにも役立てられるのかなと思います」

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