特集は夫婦で営むベトナム料理店です。人気メニューはベトナム出身の妻が作る「フォー」です。多くの人にベトナムを知ってもらう切っ掛けにもなればと長野市の駅前に出店しました。

■夫婦二人三脚で奮闘

多くの人が行き交う長野駅前に、オレンジと白のひときわ目立つ店があります。

「いらっしゃいませー」

出来上がったのはベトナムの麺料理「フォー」です。

こちらは2024年4月にオープンした「MOCPHO(モックフォー)長野駅前店」。


客:
「すごくおいしいです。さっぱりしてヘルシーな感じで」
「気にはなっていてきょう、ちょっと入ってみようかなと思って。とても本格的でおいしいと思います」


営むのはベトナム出身のチン・ティホンニュンさん(34)と、夫の伊藤悠さん(36)。

ベトナム料理MOCPHO・チン・ティホンニュンさん(34):
「皆さんに本場のベトナム料理を食べてもらって、ありがたいですね」


ベトナム料理MOCPHO・伊藤悠さん(36):
「『おいしかったよ』という言葉をいただけて、すごく苦労して作っているので、本当に報われて、すごくハッピーになりますね」

実はここが2軒目の出店。夫婦二人三脚で奮闘中です。


■真面目で結果にも人一倍こだわる

ニュンさんはベトナムの首都、ハノイの出身。日本人の勤勉さや街並みのきれいさなどに憧れがあったニュンさん。

ベトナム料理MOCPHO・チン・ティホンニュンさん:
「ベトナム人は日本が好きですから、私は日本も1回は行きたいと思って決めました」


大学卒業後の2013年、技能実習生として来日し上田市の食品工場へ。夫の伊藤さんは当時の上司です。

ベトナム料理MOCPHO・チン・ティホンニュンさん:
「実習生はみんな外国人だから言葉とか、わからない。(伊藤さんは)怒らないで優しく一つずつ教えてもらって、それは愛情になりました」

真面目で、結果にも人一倍こだわるニュンさんに伊藤さんも引かれ、2016年に結婚しました。

ベトナム料理MOCPHO・伊藤悠さん:
「2人とも多分、真面目な性格、自分で言うのもなんですけど仕事、一生懸命やってるところにお互いほれた」


■妻は「やると決めたら、やる」

その後、2人は相次いで工場を辞め、店を開くことにします。

きっかけはー。

ベトナム料理MOCPHO・チン・ティホンニュンさん:
「上田はベトナム人の友達が多くて、『ベトナムのお料理が食べたい』と言われたから、上田でお店をつくりました」

県内に住むベトナム人は6400人余り。(2023年12月末時点)

この10年ほどで10倍以上に増えました。上田にも大勢の仲間がいましたが、当時はベトナム料理店がなく、友人たちが故郷の味を恋しがっていたと言います。

そこでー。

ベトナム料理MOCPHO・チン・ティホンニュンさん:
「私の家族はレストランとか、料理の卸をやっていて、小さいときから、お父さん、お母さん、お姉さんが作ったのは(料理は)勉強して」

実はニュンさんの両親はハノイで仕出し料理の店を営んでいます。

腕に覚えがあったニュンさん。店を開くことを決意し、工場を辞めたあとは日本人にも受け入れてもらおうと日本の飲食店で味付けや接客を覚えました。さらに、ベトナムに行き夫婦で専門学校で改めて料理を学びました。

ベトナム料理MOCPHO・伊藤悠さん(36):
「すごい勢いというか、やるって決めたら、もうやるって感じで、私は本当に奥さんの手伝いできるならっていう感じ。これからベトナムの方と日本人の交流がますます深くなっていくと思うんですけど、たくさんのお客さんに来てもらって、文化も知ってもらえたらと」

そして、2022年7月に上田市に店をオープン。売上は上々でしたが、駅から距離があったため、車を持たないベトナム人は訪れにくい場所でした。


■本場の味をもっと多くの人に

もっと多くの人に味わってもらいたい。その思いから上田の店をいったん休業し、2人は思い切って長野駅前に店を出すことにしたのです。

ベトナム料理MOCPHO・チン・ティホンニュンさん:
「勇気出して、高い家賃でもやってみたいと思って、ここは人多い。海外の友達(観光客)も多いですからね、食べさせたいと思って」

店名になっている「MOC(モック)」はベトナム語です。

ベトナム料理MOCPHO・チン・ティホンニュンさん:
「化粧してない顔とか、もともとの味とか、それでモックです」

「元祖」や「本格」という意味も持つ「モック」。


店名の通り、本場の味にこだわり、「フォー」のスープは、牛骨をおよそ12時間煮てからシナモンや八角など、およそ10種類のスパイスを加えたものがベースとなっています。


さらにー。

ベトナム料理MOCPHO・チン・ティホンニュンさん:
「これは生麺使っていますね。私にとって生麺はベトナムの味に近いです」

生麺には気泡ができていてスープとよく絡むそうです。日本で製造している業者は少なくベトナム人が営む東京の製麺所から取り寄せています。


■一番人気は「牛しゃぶフォー」

店の一番人気は、サッとゆでた牛モモ肉をのせた「牛しゃぶフォー」。

食べた客:
「スープがすごくおいしいです。いろんなスパイスの味がして、お肉も柔らかくて、本当においしいです」


「フォー」以外も好評です。

「バインミー」を注文したのは松本から来たベトナム出身の2人。

客:
「おいしかった」
「パンは味(ベトナムと)同じ。おいしい。(日本でベトナムの味が食べられるのはどう?)うれしい」


ベトナム料理MOCPHO・チン・ティホンニュンさん:
「(ベトナムの方がニュンさんの料理をおいしいと言ってるが?)私はとても喜んでいますね。だって、ずっと笑っている(笑)。ありがとうございます」


■「海外の友達」にも味わってもらいたい

インバウンドが好調な信州。

長野駅前は、ニュンさんが「海外の友達」と表現する多くの外国人が行き交っています。2人はベトナム人や日本人に限らず多くの人にベトナムの味を知ってもらいたいとしています。

ベトナム料理MOCPHO・チン・ティホンニュンさん:
「どの国の人でも自分の国に誇り、私もそうですね。今、海外にいるのは、世界の友達に自分の国を紹介する機会と思って。私の目標は日本人だけじゃなくて海外の友達にベトナムの文化・飲食文化とか知ってほしい。(店に)来て、おいしく食べてもらいたい」

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