子供たちの笑顔あふれる居場所。不登校や教育現場に「世界一楽しい革命」を。
トーキョーコーヒー 代表 吉田田(よしだだ)タカシさん:子供にあれこれ教えなくても、大人が楽しんでいるだけで子供が安心できる居場所になるんだったら、誰でもできるやん!
学校に行けなくても取り残されない社会を…。急速に広がる、その名も「トーキョーコーヒー」の理念とは。
不登校の小・中学生がおよそ30万人となる中、親や教師の意識は少しずつ変わってきている。
全国に広がる“活動”を取材した。
■「不登校が問題なのではなく、大人の無理解が問題」
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夏休みが明け、子供たちが集まってきたのは、学校ではない。ここは大阪市内にある「トーキョーコーヒー NO.27あべの」。
小学4年生 歩くん:毎日、夏休みや。
小学5年生 こうたろうくん:ママにも『あんたは毎日夏休みや』って言われた。
小学4年生 歩くん:他の友達と遊ぶ時に、他の友達は学校行ってるから、ちょっとさみしくなる。
学校に行っていない子供の親や、地域の大人が支えあって運営している。
始まりは2022年の奈良・生駒市。
「トーキョーコーヒー」は「登校拒否」のアナグラム(言葉の文字を入れ替えて別の言葉をつくること)。言葉遊びから生まれた。
トーキョーコーヒー 代表 吉田田タカシさん:子供たちの不登校が問題なのではなくて。その子供たちの声を聞いて、大人の無理解が問題なんだってこと理解して、まず大人がこんな感じで楽しむ。その後に子供たちが見ての通り、どんどん自由になっていく。
代表の吉田田タカシさんの呼びかけに共感した、不登校の子を持つ親などの大人たちが全国に拠点を作り、その数はわずか2年で北海道から沖縄まで、全国400カ所に迫っている。
「大人が楽しんで子供の安心する場所を作る」。活動内容はそれぞれが考え、自由な形で運営されている。
代表の吉田田さんのもう1つの顔は、スカバンド「DOBERMAN(ドーベルマン)」のボーカル。
ライブには、ファンだけでなくトーキョーコーヒーの拠点に通う子供たちの姿も。大人が全力で楽しむ場所は、どこでも“トーキョーコーヒー”だ。
小学6年生:(親の)考え方が変わって、『休んでもいいから将来のこと自分でやってね』って。結構変わった。
トーキョーコーヒー 代表 吉田田タカシさん:歌いながら、『あいつも来てる、あいつも来てる』って。僕らも楽しかったし、みんなめっちゃいい顔してたから、“楽しい”が1番やなって思った。
■家庭と学校が子供の全世界 不登校は「世界の半分が真っ暗闇」
吉田田さんが今、伝えたい事とは…。
今年6月に行われた「トーキョーコーヒーあべの」主催のトークイベントで、次のように語った。
トーキョーコーヒー 代表 吉田田タカシさん:ほとんどの場合っていうのは、まず、子供が学校行かないとなった瞬間に、(親は)自分を責めるんです。『私の子育て、何か途中で間違えたのかな?』と。『なんでみんなが行けてる学校に、うちの子は行かれへんのやろ?』。
学校と家庭というのが子供にとってほとんど全世界なんですけど、『世界の半分がもう真っ暗闇なんです』ってお母さんに白状したんですよね。『無理なんです』と。『この真っ暗闇の所に行きたくない』と言ったら、その結果どうなったかというと、家庭も真っ暗闇になったんですよ。『ここだけは自分を安心していさせてくれる場所と思ってたのに、私のせいでお父さんとお母さんがけんかしてるし、お母さん夜になったら泣いてるし』。お母さんの心の中は、もちろん味方ですよ。もちろんあなたの味方なんだけど、本人からしたら死ぬほど行きたくないって言っているのに、そこに行かないと不幸になるって言ってくる人が、味方だなんて思えない。
学生時代の学校への違和感、子供が学校に行かなくなったこと…。吉田田さん自身の経験に基づく考えに共感が広がっている。
トークイベント参加者:(子供は)中1です。
トークイベント参加者:中1と小4です。
トークイベント参加者:子供が学校に行けない状況になって初めて『あ、間違っていた』と。何ができるか分からないけど、持って帰って動きだしたいなと思いました。
トーキョーコーヒー 代表 吉田田タカシさん:もう僕のものじゃなくなった、トーキョーコーヒーが。僕がやっているというより、みんながやっていて、僕は言い出しっぺで、みんながそれぞれの考えでやっているし、地域や教育関係者を巻き込んでいっているし、すごいなって思っている。
■トーキョーコーヒーに通うと出席認定する学校も
2年前から運営されている大阪市阿倍野区の拠点では、学校との連携が始まっている。
ある日のトーキョーコーヒーでは、みんなで料理を作っていた。
小学5年生 こうたろうくん:ここほとんど家庭科の教室やから、いろいろ学べる。
食材を切りながらそう話した、小学5年生のこうたろうくん。4年生から学校に行かなくなり、週に2回ここに通っている。
実は今年2月から、トーキョーコーヒーに通うことが小学校での出席日数として認められるようになった。
こうたろうくんの母・あやさん:とりあえずゼロよりは、何か活動していることを、『活動している』と認めてもらえたことはありがたいんじゃないかなって思っています。
小学5年生 こうたろうくん:学校に行ってもいいし、行かんでもいいし、というのを自分で選べるのはすごくいいことだと思います。色んなところ行かせてくれるのは、息子としてはありがたい。
こうたろうくんの母・あやさん:そうですね、どういたしまして。
家ではタブレット学習などをするこうたろうくん。学習計画を自分で立てるなど、自立心が芽生えてきたという。
小学5年生 こうたろうくん:今思ったら自分でやって、やることを決めてやった方が楽やなって思う。
こうたろうくんの母・あやさん:やりたいことと、やってほしいこと、親としてこれぐらいはっていうことのすり合わせでこの形ですね、今は。
学校に行かないのに出席認定されるわけは、“対話と理解”。小学校の畑の一角を借りて始めた農作業をきっかけに対話が生まれ、当時の校長が理解してくれたのだ。
トーキョーコーヒーあべの 木ノ本真里さん:トーキョーコーヒーっていう立場で、何らかの形でやっぱり学校とかかわるっていうのがすごい大事だなと思ってたから。
学校にとっても、児童が家に閉じこもり、つながりがなくなってしまうことよりも、学校以外の“居場所”があることは大切だと感じている。
この動きは阿倍野区内の他の学校にも広がり、トーキョーコーヒーに通う他の児童も出席認定となった。
歩くんの母・直子さん:学校もどんどん変わっていってるんだなあって思います。地域とか学校とか社会全体で子供を見られたらすごくいいなって。お母さんにとってもすごく負担も減るし、安心もあったり、そういう社会であってほしいと思っています。
Q.トーキョーコーヒーはどんな場所?
小学4年生 歩くん:自由な場所。
■学校も巻き込む「学校以外の居場所」
新たな学校との連携を模索して、この日は現役の先生や教頭など、教育関係者10人以上が集まり、意見を交わした。
トーキョーコーヒーあべの 木ノ本真里さん:学校でトーキョーコーヒーやりたいんですよね。空き教室とかあったら、そこでできたら本当に最高なんですけど。
トーキョーコーヒーを出席認定する小学校 元校長:気持ちは分かるけど、必ず反対は出てくるからね。トーキョーコーヒーがよろしいと思っていても安全面がどうとか…。
小学校教員:盆踊り好きな子はそういうところでも発揮できるし、畑好きな子は畑があるし。そういう場所はめっちゃあったほうがよくて、学校の中でもいろんな先生がいろんなことしていて、どこの先生のところに行ってもいいんだよ、みたいな。それが大事だと思います。
トーキョーコーヒーを出席認定する小学校 元校長:学校で私たちだけで何かできるかって、できない。何かを仕掛けようとすると、つながりがないと無理なんですよ。仕掛けをしていけば変化があるよねっていう、そこかな。
トーキョーコーヒーあべの 木ノ本真里さん:大人が笑って元気に楽しんでたら、子供って本当の意味で安心して笑えるようになる。
学校で過ごす時間をもうちょっと先生が楽しめるようになったら、子供たちもきっと今よりもっと楽しくなるし、学校が行きたくなる場所になることにつながるんじゃないかなと思います。
親や子供、さらには先生も笑顔になる「教育現場」を目指して、トーキョーコーヒーの「楽しい革命」は続く。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年9月3日放送)
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