左上に「馬もり」のカメラを設置した馬房=ノーリツプレシジョン提供

 サラブレッドの出産する兆候を人工知能(AI)で検知するシステムが開発された。馬の安全な出産には人間の介助が不可欠で、従来は兆候を把握するために昼夜問わず見守る必要があった。AIを活用する客観的な予測方法で労働環境を改善させ、死産など出産時の事故を減らす狙いがある。AIが名馬の誕生に一役買うことになるか――。

 製品名は「馬(うま)もり」。写真処理機器や医療機器の開発・販売を手掛けるノーリツプレシジョン(和歌山市)が北里大獣医学部と共同開発した。

 馬の妊娠期間は330~360日程度で、出産の可能性がある期間に幅がある。春から夏にかけて出産が続き、生産者にとって肉体的にも精神的にも負荷が大きい。

サラブレッドの出産を検知するシステム「馬もり」の機器=ノーリツプレシジョン提供

 出産の兆候には、ぐるぐる動き回るような行動量の増加や、目視では確認できない体表面温度の上昇といったことがある。システムは熱の変化を察知できるカメラを使用。母馬の動きや体温の変化をAIで検出すると、すぐにスマートフォンに知らせてくれる。馬房内を明るくしておいたり、母馬の体に機器を取り付けたりする必要はないため、馬への負担もない。

 実証研究では176頭のうち167頭(95%)で、出産を事前に通知できた。協力した生産者からは「通知を受けてから母馬を確認するようになり、見守りの時間が短くなった」といった声が届いているという。

 同社の担当者は「アニマルウェルフェア(動物福祉)やサラブレッド生産者のDX(デジタルトランスフォーメーション)に貢献できる」と説明している。システムは11月発売で、価格は付属品を含めて70万円程度。【嶋田夕子】

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