循環センターに集まった大量の衣服を1点ずつ仕分けていくエコミットの水挽健太さん=埼玉県入間市で

 着ていない衣類を手放す際、その68%が可燃ごみや不燃ごみとして廃棄されている-。こんな数字が、環境省の2022年度の調査で明らかになった。低価格のファストファッションの台頭で、衣類が大量に生産・消費されて捨てられていく中、まだ使い道がある衣類を古着として再流通させたり、資源としてリサイクルさせたりする取り組みが広がっている。 (大野雄一郎)  埼玉県入間市の工場が立ち並ぶ地域にある、広さ900平方メートルほどの倉庫。衣類のリユース・リサイクルを手掛ける「ECOMMIT(エコミット)」(本社・鹿児島県薩摩川内市)の「循環センター」と呼ばれる施設だ。9月上旬に訪れると、中には大量の中古衣類が積み上がっていた。10人ほどのスタッフが衣類を仕分けしたり、運んだりしている。  エコミットでは、商業施設やマンションの共用部など全国200カ所以上に回収ボックスを設置するなどして、使われなくなった衣類を仕入れている。集まった衣類は、入間市を含め全国7カ所にある循環センターに運ばれた後、スタッフが一つずつ状態を確認し、選別。古着として再販させたり、素材としてリサイクルさせたりしている。会社全体では、多いときで年間6千トンの衣類を扱っており、廃棄に回るのは2%程度にとどまるという。  総務省の家計調査などによると、ここ30年間で衣類の供給量は増加傾向。一方、衣服1枚当たりの価格は約6800円から約2800円へと低下した。大量生産、大量消費が廃棄量の増加にもつながると懸念されている。エコミットの広報担当者は「新品の衣類を買うルートは多いが、手放す際のルートはまだ少ない。衣類を循環させるインフラとしての役割を担いたい」と力を込める。  こうした取り組みに自治体も注目している。愛知県蒲郡市は6月、エコミットと連携協定を結び、今月から市内の店舗など10カ所に回収ボックスを設置した。  同市ではこれまで、衣類の回収は資源ごみの日に出すか、クリーンセンターに直接持ち込むかしかなく、繊維系の可燃ごみは年間で1200~1400トンに上る。連携が軌道に乗れば焼却量の削減につながるだけでなく、回収した衣類の運搬を市内企業が請け負うなど地域経済の活性化にも寄与すると期待される。  衣類の回収には大手アパレル会社も乗り出す。ユニクロでは「RE.UNIQLO」と銘打ち、ユニクロのほか、関連会社のジーユーなどの商品を全国の店舗で回収。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)経由で難民に届けたり、素材としてリサイクルさせたりしている。ファッション事業者の「ワールド」は、グループ会社が高級ブランド衣類をメインに買い取って販売する事業を展開。7月には名古屋・栄に路面店を出した。ユーズド品の「買いやすさ」を向上させる取り組みだ。  一方、回収場所が増えることで思わぬ弊害も。エコミットの循環センターで選別作業を担当する社員の水挽健太さん(31)によると、回収ボックスには紙コップなどのごみが交ざっていることがあり、「汚れが衣類に付いて再利用できなくなってしまうこともある」。ごみ箱ではなく、資源を集めているという意識をいかに浸透させるかも課題になりそうだ。


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