岸田文雄政権の矢田稚子・首相補佐官(58)は毎日新聞のインタビュー取材に応じ、子育てと介護が重なるダブルケアについて「現状を追跡する新たな政府調査が必要だ」との認識を示した。政府は8年前、全国に約25万人のダブルケアラーが存在するとした初の推計値を公表したが、この調査を最後に詳細な分析をしていない。
インタビュー詳報 「もう限界」
矢田氏は松下電器産業(現パナソニック)の労組幹部や参院議員を経て、2023年9月から首相官邸側の要請で賃金・雇用担当の補佐官に就いた。補佐官は首相の政策ブレーンとしての役割を担っている。
大阪府寝屋川市出身。10代の頃に両親の介護を担うヤングケアラーの経験があるほか、長男(22)を出産した当時は末期の肝臓がんだった父親の介護が育児と重なるダブルケアにも直面した。
矢田氏は6月、国会内で取材に応じ、「実態を把握しなければ、有効な政策を打ち出せない」と指摘。政府として新たな調査を実施する必要性に言及した。
ダブルケアを巡っては16年、内閣府が12年の就業構造基本調査に基づき、全国で推計25万3000人の担い手がいるとした調査結果を公表した。
一方、毎日新聞は1月、国と同様の手法で17年時点の推計値を調査した結果、全国で少なくとも29万3700人がダブルケアに直面していることを報道。30~40代の働く世代が9割を占め、子育てや介護に追われて離職を迫られる人が少なくないことも明らかになった。
ダブルケアは超高齢社会で介護が必要な人口が増える中、晩婚・晩産化という流れが重なることで急速に広がっている。担い手たちは体力面や精神面のみならず経済的な負担も強いられているが、社会の理解や公的なサポートが乏しい。
国民民主党は4月、政府によるダブルケアラーの実態調査や的確な負担軽減策の実施を義務付けた支援推進法案を参院に提出したが、国会で審議されていない。【郡悠介】
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