巨大地震が発生した時に津波から身を守るため、静岡市清水区の会社が120人以上が乗ることができる大型のシェルターを開発しました。地震が来たらすぐに乗り込むことで津波にのみ込まれず避難できるということです。
収容人員を8人から120人超に改良
伊藤渚紗 記者:
こちらが今回新たに開発されたメガフロートです。約120人を乗せ、地震発生時に津波から身を守ることができ、このように簡易トイレも設置されています。
9月18日に公開されたのは静岡市清水区の小野田産業が地元の大学などと共同で開発を進めてきた大型津波シェルター「SAMメガフロート」です。
8メートル四方の発砲スチロール製で、これまでの8人用から大幅に収容人数を増やし120人以上が乗ることができます。
普段は沿岸部の公園などに置かれ、津波が襲う前に乗り込むことで上昇する海面の上で浮きながら安全に避難することが可能だということです。
小野田産業・小野田良作 会長:
地震がありましたよね、あの東日本大震災。あの津波を見て、(静岡でも)ありうるじゃないですか。その時に逃げ場所がない、やはり逃げ場所を作りたい。メディアも「安全な場所に避難してください」と言うじゃないですか。その安全な場所を提供するという意義がある
きっかけは東日本大震災
こうした津波対策が加速したのはあの日がきっかけでした。
2011年3月11日に発生した東日本大震災。死者は1万5900人、今も行方不明者は2520人に上っています。
死者の9割以上が「溺死」、津波により命を落としました。
東西に長い海岸線を持つ静岡県。
想定される南海トラフ巨大地震では早いところでは数分で津波の第1波が押し寄せると想定されています。
県の想定で死者は最大10万5000人。うち、9万6000人が津波に伴う犠牲者です。
どうやって家族を、街を守ればよいのか。震災後、県内ではさまざまな対策が進められました。
各地に整備が進む防潮堤。
完成した津波避難タワーは117カ所。
命山などの避難マウンドは18カ所となっています。
コンクリート造りの避難ビルの指定や誘導のための看板の設置なども進みました。
沿岸部の学校には救命胴衣が供えられ、保育園の中には津波避難の救命艇を購入するところもありました。
発泡スチロール製の避難シェルターの開発・改良
企業も力を尽くしてきました。
静岡市に清水区にある住宅メーカーの小野田産業。
津波対策の一助になろうと他の企業とも連携し、取り組みを進めてきました。
2017年に完成・披露されたのが発泡スチロールの避難シェルター「SAM」です。強い衝撃に耐えられるよう、設計・塗装などに工夫を凝らしました。
その2年後(2019年)に披露されたのは「SAMLIFE」。
戦闘機の外装にも使われる特別な樹脂を使うなど、強度にこだわるのは津波の際に車や家など様々な浮遊物との衝突が考えられるためです。
公開実験(車の落下実験)では、避難者が入るスペースの安全性と快適性が確認されました。
小野田産業・小野田良作 社長(当時):
ここにいれば電気も通じ、携帯電話も見られて安心では
津波から命を守るために企業の技術と力を生かしたい。
関係者の思いが、開発の原動力となってきました。
130人が乗り安定性を確認
そして、今回新しく開発されたのが120人以上収容できる津波シェルター「SAMメガフロート」です。
18日は清水区の折戸湾で約130人が乗り込み、公開実験が行われました。
南海トラフの地震で最大11メートルの津波が予想される清水区。
約130人が乗ったメガフロートの重さは約9000kgで、海に浮かべた時の安定性などを確認します。
伊藤渚紗 記者:
こちらから見えるメガフロートは大きな揺れもなく安定しているように見えます
体験した人:
安定していますね。もう少し横揺れするかなって思いましたけど、これだけ乗ってもちょっとの揺れで収まっていますね
体験した人:
120人乗るって聞いて若干少し不安だったけど、乗ってみるとそんなことなくて安定している
メガフロートは船にえい航されながら、折戸湾を約1時間周遊しました。
小野田産業・小野田良作 会長:
思い通りです。計算通り。強いて言えば何人乗れるかというところが課題だったが、今日は131人が乗りあの状況だから大丈夫だなという印象です。自治会館に置くとかそういう使い道ですよね。誰もが乗ると。外国人の方も多いものですから、とにかく命を救いたいということで作ってます
-東日本大震災の津波被害を受け避難タワーや命山などの整備が進みましたが 、津波対策の選択肢としてこうしたシェルターを使うのもとても有効ですよね。
菊地幸夫 弁護士:
高齢者や障がい者など短時間で安全なところに移動するのが難しい方々がいる施設の近くに置くなど(メガフロートの)使い道はいろいろあると思う。企業として採算が合うのかというリスクがありながら、こういうものを開発していく姿勢は見習うべきところがある。地域防災の為にこうした開発に取り組むのは素晴らしい。自治体と連携して、津波対策の選択肢を増やしてほしいですね。
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