児童生徒の保護者らでつくるPTAには、時代に合わせて改革を進める団体がある一方、旧態依然とした組織も少なくない。個人に過剰な負担がかかる現状を変えようと動いた、東京都内の30代の自営業男性の経験を踏まえ、前例踏襲を繰り返す組織を変える方法を考えた。(浅野有紀)

入学時に配られたPTA加入についてのプリント

◆くじ引きで広報委員長に

 「来年は受験生なので、今年やらせてください」。男性は昨年、長女が通う品川区立小で、PTA委員の選出時に必死に訴える保護者の姿を見た。「早めにやった方がいいのか」と今年4月、広報委員に立候補。所用で委員会の会合を欠席すると、後で役員から電話で知らされた。「くじ引きで委員長に選ばれました」  広報委員の仕事は、学校行事などを振り返る冊子作り。委員長が紙面構成や印刷発注など、取材以外の編集を全て担う。学期ごとの発行で、歴代の委員長には「泣きながらやった」と話す人もいた。  「1人に押しつけるのはおかしい」と冊子の電子化を25人の委員に提案したが、賛成は約半数。電子版の長所と短所、他校の事例をまとめ、5月にはPTA役員にも提案した。だが、長く組織運営に携わる他の委員会の委員には「冊子ができない理由を探しているようだ」と批判された。

◆脱会し、区教委に陳情

 嫌気が差した男性は脱会。外から改革できないかと区教育委員会に陳情した。負担の不公平さに加え、任意加入なのに校長名で「保護者全員にご加入いただいております」とする文書を配っていること、給食費などの支払いのため学校に届けた口座からPTA会費も一括で引き落とされていることなど、不透明と思える運営方法を示し、区教委に改善を呼びかけるよう求めた。  区教委は陳情を「法令上、対応しがたい」と不採択としたが、事務局が9月、PTAは任意加入であることなどを各校に周知した。  「行事報告は学校の仕事。何のための広報か話し合った方がいい」。かつて千葉県松戸市内の小学校で、PTA会長として改革に取り組んだ竹内幸枝さんは指摘する。当時は活動をノルマ化する「ポイント制」が導入され、早めにポイントが集められない人に、不人気な業務が押しつけられる状況が生まれていた。  ポイント制の廃止に向けアンケートをしたが、6割以上が「反対」。「ポイント制を機に活動したら案外楽しかった」という前向きな理由が多かった。「それ以外のきっかけをつくりましょう」と複数回の説明会を開催。「廃止したら参加しない」と納得しない人もいたが、「参加しない権利もある」と押し切った。議論の足掛かりとして、回答には必ず理由を書き添えてもらうなど、設問の工夫が重要という。

◆何のための活動か?

 竹内さんは今、長男が通う高校のPTAには未加入。その上で高校に、学校として知り得る生徒や保護者側の情報をPTAに伝えないよう求めている。学校からの情報で会員を把握するPTAは多いといい、「入会届を作って会員を把握する方が望ましい」と話す。  PTA問題に詳しいライターの大塚玲子さんは、役員が1年から数年で代わるという組織の性質上、「新しいやり方にたどり着けないまま、とりあえず前年と同じ活動を繰り返しがちだ」と指摘。「何のための活動かを考え、活動を絞り込むことも必要だ」と話す。

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