ネット上に本音を吐き出すあまり、分断が激しくなり、時には罵り合うような状況が増えてきている。意見の異なる相手の話をどのように聞いて、まとめていくのか。多様性が重んじられる一方で、合意形成との“相性の悪さ“も目立つ。
【映像】議論をぶつけ合う自民党総裁選、9人の候補者
日本のリーダーとなる次の総理候補は「社会の分断」をどう考えるのか。自民党総裁選に立候補した9人の候補者が、『ABEMA Prime』で議論を交わした。
■石破氏「自分の意見に賛成する者だけで盛り上がってもしょうがない」
石破茂元幹事長は「賛成する人ばかりを集めて、自己満足している社会は危ない」と警鐘を鳴らす。「ネット社会では、アルゴリズムで賛成意見ばかり集まり、考え方が偏る」。防衛庁長官時代を振り返り、「あえて政府に反対の立場をとるテレビ局の番組に出ていた」また、「憲法改正でも、あえて共産党系の集会に行くと、『お前の意見には賛成できないが、言っていることはわかった』となる。そうしないと社会の分断は進む一方だ」と語る。「自分に賛成する者ばかり集めて盛り上がっていてもしょうがない。若い頃に『野党に賛成してもらうのは無理でも、納得はしてもらえ』とたたき込まれた」。
■林氏「意見が違うことを納得する状況にすべき」
林芳正官房長官は、小学生の頃に「多数決は、反対した人も多数に従わなければならない。だから、まず話し合いで違いを確認しなさい」と教わった。その経験から「意見が違うことを納得する状況にすべきだ」と提言する。「自分の意見が否定されると、人格まで否定されたような気持ちになる。アメリカでは小中学校で、立場を変えた議論を訓練させる。日本でも始まっているが、冷静に議論し、違いを探り、埋めていくことが重要。なんでもすぐに決めればいいというものではない」。
■高市氏「意見を無理やりまとめるのは民主主義じゃない」
高市早苗経済安保担当大臣も、「意見を無理やりまとめるのは民主主義じゃない」との立場だ。「国民の代表として、“一番の答え”を導き出さなければならない。政府が出した法案でも、党内の議論で書き直すこともある。納得したものだけを閣議決定して、国会に出せる仕組みになっている」。
最近は育児をめぐる分断が注目されているが、介護でも同様になるのでは、と気をもむ。「50代は国会議員をやりながらの介護で地獄だった。会社として、仕事を代わってくれる人に多めに給料を出すなど、モチベーションを高める必要がある。人手不足の時代には、働く側が強い。費用を負担してくれる会社が選ばれる」。
■小林氏「無意識の思い込みがある。もっと対話を」
小林鷹之前経済安保担当大臣は、子育て中の勤務を引き合いに出し、「制度と風土の両面から捉えるべきだ」と指摘する。制度としては「子どもが熱を出した時、カバーする人に過重な負担がかからないように、勤務間のインターバルを取る」などが考えられる。風土には「無意識の思い込み」があると指摘する。「仕事を誰が代わるのか。独身やベテランでも、予定があるかもしれない。大切なのは法律ではなく、企業内でもっと対話をすることだ」。
■上川氏「いったん決めた法律であってもまた見直しができる」
上川陽子外務大臣は、「民主主義の基本は、法律を作ること」だと説明する。「賛否の議論を戦わせながら、一定のところで多数決で採決する。だが、いったん決めた法律であってもまた見直しができる。時代の変化で再検証して、法改正していく。絶えず検証を続けて、良いものにしていく努力が大事だ」。
■河野氏「ネットの議論と人格が一致していることが非常に多い」
河野太郎デジタル大臣は、「ネットの議論と人格が一致していることが非常に多い」と危機感を覚えている。「人格批判になると、まともな議論にならない。投稿者のプロフィールを見ると大学教授も多く、見た学生が『教授が罵倒するなら、自分もやっていいのか』となってしまう。議論と人格を分けるディベートの前提ができていないのが、日本のネットの現状だ」。
■小泉氏「若い人にはコーチングが大事。我々には人生の道しるべを示す人がいた」
小泉進次郎元環境大臣は、自民党の雰囲気として、「政策が一致しないことが、人格の全否定につながらない」点を挙げる。「若い人にはコーチングが大事。我々には教師や親、兄弟、地域の誰かなど、人生の道しるべを示す人がいたが、コミュニティーが希薄になっている。多様な人材が学校に入り、多様な質を確保できるように、抜本的な教育改革が必要だ」。
■加藤氏「コミュニティーが大事。若者に集まって発信してもらいたい」
加藤勝信元官房長官は、「コミュニティーが大事だ」と述べる。「親子や友達関係、『隣のおじさん』のような斜めの関係も大切だが、そうした場がなくなっている」。いわゆる“子ども食堂”を例に出し、「最初は子どもたちだけでも、次第に地域の人が集まり、若者も入ってきて、年代が関係なくなっていく。議論に若者を入れるのではなく、若者に集まって発信してもらいたい。そして政治が身近になっていくのが大事だ」。
■茂木氏「交渉はお互い6:4で勝ったと思える状態を」
茂木敏充幹事長は、「考え方の違いを理解した上で、『一致する部分』を探る」ことの重要性を語る。「関心の高さも違う。賛否の中でも『譲れない』『考えても良い』がある。交渉はお互い6:4で勝ったと思えるとまとまる。一人勝ちでは合意できない」。
物事は「9:1ではまとまらない」という。「米トランプ政権の貿易交渉では、コメの市場開放を必ず求められる。『日本はコメだけはやりたくないから、他で譲歩してくれるだろう』という思惑があるからだが、『コメを開放しても、喜ぶのは民主党支持のカリフォルニア州でしょ。共和党のトランプは怒るのでは?』と話すと、話題が変わる。相手の関心をつかむことが重要だ」。
(『ABEMA Prime』より)
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