◆長期で考え内容見直しも ファイナンシャルプランナー(FP)・石原玄紀さん
<A> 投資信託は長期で保有することで、預金よりも資産を増やすことが可能ですが、タイミングによっては短期間のうちに元本を割ることもあります。長期的に保有できる資金で将来のために資産形成をしているのならば、急落時に手放すことはお勧めしません。大きく下がった時に売るのではなく、少し落ち着いてから資産内容を見直す方がいいと思います。 8月に日経平均株価が暴落し、投資信託が元本を割った人も多いでしょう。特に5日は1日での下落幅が過去最大となり、投資が怖くなってしまった人もいるのではないでしょうか。過去にも2008年の「リーマン・ショック」など大きな下落がありましたが、株価は長期的には右肩上がりを続けています。世界の人口増や経済成長で、今後も上昇すると見込まれます。短期では下がることがあっても、長い目で見ると資産を増やすことが可能です。 投資信託は積み立てで購入する場合が多いと思います。一定金額を定期的に購入する方法を「ドル・コスト平均法」と言い、一度にまとまった額を投資するよりも、高値で買ってしまう失敗を避けやすくなります。 例えば毎月1万円ずつ4カ月投資するとします。基準価額が1万円の月には1万口買うことができます。翌月に値上がりして1万2千円になると、買える口数が8333口に減り、次に8千円に下がると1万2500口に増えます。翌月に元の1万円に値を戻すと、4カ月で4万833口の購入になります。 最初に4万円購入した場合は4万口なので、この例では積み立ての方が平均購入単価を抑えられたことになります=図参照。価格が上がり続けるような場合は一括投資の方がいいですが、上下する場合は積み立てを続けることでリスクを下げられます。 安く買うと、相場が回復した時にはプラスになります。余裕資金がある方は、下がった場面で追加購入することもお勧めです。価格が上昇した際に元本を取り戻しやすくなります。ただしさらに下がる場合も考えて、追加で買えるように余力を残しながら投資を増やすことを心掛けてほしいです。 積み立てではなく退職金などを一度に投資している場合や、投資先が株式中心の投資信託の場合は、手放して投資先を見直すことを考えてもいいかもしれません。投資信託は5%以上急落した場合に、運用会社が下落の理由を説明する「レポート」を出します。今後の見通しについて、金融機関の担当者に相談するのもいいでしょう。 投資する際に、どのくらい下がったら手放すかを決めておくといいと思います。自身の想定よりも下落したら売ると決めれば判断がしやすいでしょう。<詳しく!>リスクを減らす分散投資
投資では元本割れのリスクをゼロにはできないが、一つの資産だけに投資するよりも、値動きが異なる複数の資産に分散することで、安定的な運用ができるとされる。株式投資は会社の業績などによって大きく値が動くことがあるが、投資信託は何十社もの株式などに分けて投資するため、株式に比べてリスクを分散させることができる。 ただ、投資信託でも株式だけで構成された商品は、8月のように大きく値を下げる場合もある。石原さんは「よりリスクを避けたければ、値動きの異なる債券や不動産投資信託(REIT)、金などに分散投資するといい」と勧める。国内外のさまざまな投資先に分散するのもリスクを減らす効果がある。 投資信託を売るのは「お金が必要になった時。あるいは特定のテーマに沿った銘柄を扱うテーマ型の投資信託にははやりがあるので、大きく上昇し、利益を確定したい時には考えてもいい」と話す。 (海老名徳馬) <いしはら・げんき> 1979年、名古屋市生まれ。証券会社などで勤務し、昨年11月に「FP石原合同会社」を設立。金融や相続などの相談業務に携わる。
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