TBSのアナウンサーや記者として活躍した久保田智子さん(47)が4月、兵庫県姫路市の教育長に就任した。テレビの世界から50万都市の教育行政トップへの転身で、就任時に「子どもが主語になる学校づくり」を掲げた。子育て中でもある久保田さんは、そこにどんな思いを込めたのか。

 ――特別養子縁組制度で5年前に0歳児を迎えて育てていますね。

元TBSアナウンサーの久保田智子・姫路市教育長=兵庫県姫路市で2024年4月19日、三村政司撮影

 ◆特別養子縁組はその名の通り、ご縁があって子どもと出会います。少しタイミングがずれていたら、娘は他の家族のところに行ったかもしれません。たとえそうでも娘は幸せいっぱいでいてほしい。そんな思いが自然に湧いてきました。

 そうすると、周りの子どもたちみんながとても大切な存在に思えてきて、子どもが幸せに育つ環境を大人が作っていかなければと思うようになりました。どんな形であれ、子どもたちのために自分ができることをやりたいという気持ちを持ち続けています。

 ――なぜ、姫路市の教育長になったのでしょうか。

 ◆2020年度から4年間、姫路市の私立高校でオーラルヒストリー(口述記録)に関する外部講師を務めました。そこで知り合った清元秀泰市長に打診されました。

 子どもにとって大切な環境は家庭、地域、学校だと思います。家庭と地域についてはこれまでも当事者意識を持っていましたが、今回、学校に直接関われるのであればやってみたいと思いました。

元TBSアナウンサーの久保田智子・姫路市教育長=兵庫県姫路市で2024年4月19日、三村政司撮影

 引き受ける前に、関東地方の教育委員会が学校訪問する様子を見せてもらったことがあります。教育委員会は学校を管理するのではなく、支援すればいいと分かり、それなら私にもできることがあるかもと思いました。不安はありましたが、最後は夫が「子育てをしながら教育長をやることに意味があるよ」と言ってくれて決断しました。

 ――「子どもが主語になる学校」とは?

 ◆米国の大学院で学んだ時、「主語は私だ」という感覚がありました。学生は自分で学び、自分の意見を述べる。先生はそれを誘導してくれる。私の子どもの頃を思い出しても、先生から褒められ、自分で何かをやった時の記憶はしっかり残っています。

 子育ても同じですが、つい大人の都合で子どもを動かそうとしてしまう。それを意識的にやめて「子どもファースト」を徹底したいです。

 ――そのためにどんな取り組みをしますか。

 ◆まずは先生の働き方改革です。先生たちは子どものことを大切にする気持ちを持っていると思います。でもまずは自分と家族をしっかりケアできなければ、子どもを100%の力でケアすることはできません。

元TBSアナウンサーの久保田智子・姫路市教育長=兵庫県姫路市で2024年4月19日、三村政司撮影

 市の取り組みには、まだ工夫の余地はあります。何が負担になっていて、何を変えないといけないかを最もよく知っているのは、先生たち自身だと思います。学校現場の声をとことん聞くことから始めたいと思っています。

 ――家庭と仕事の両立は、ご自身も大変なのでは。

 ◆平日は「ワンオペ育児」ですね。朝、自転車で保育所に送り、夕方迎えに行き、食事や風呂の世話をして一緒に寝ます。朝4時に起きて自分の時間を取ります。働き方改革を掲げる以上、私自身も定時出勤、定時退勤を続けるつもりです。【聞き手・村元展也】

くぼた・ともこ

姫路市教育長に就任した、元TBSアナウンサーの久保田智子さん=兵庫県姫路市で2024年4月19日、三村政司撮影

 1977年生まれ。2000年にTBS入社。結婚後の17年に退社し、米コロンビア大大学院修士課程修了。20年にTBSに復職したが24年3月に退社。夫を東京に残して姫路市で娘と2人暮らし。

特別養子縁組制度

 親が育てられない原則15歳未満の子どもと、血縁のない夫婦が親子となる。実際の親との親子関係は消滅し、戸籍上も養親の実子となる。半年以上の試験養育期間を経て、家庭裁判所の審判によって成立する。司法統計によると、22年は580件成立した。

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