富士山の登山者の約6割が利用する吉田ルートで今夏から導入された1人2千円の通行料について、山梨県の長崎幸太郎知事は1日、来夏から引き上げを検討していることを明らかにした。週末と平日の通行料に差をつけることも考える方針だ。

 この日の県議会の代表質問で答弁した。長崎知事は、富士登山の安全対策について、「受益者(である登山者)が負担することはあるべき姿」と改めて強調。今夏から通行料を徴収したことで「約5千万円の県民負担が軽減された」と財政的な効果を明らかにした。

 そのうえで、来夏の通行料については富士登山の適正化に必要な費用を改めて算定した上で「引き上げを視野に見直す」と述べた。

 さらに、平日に比べて登山者が多い週末には、安全対策の費用も多くかかるとして「週末と平日の通行料に差を設けることも研究する」と述べた。

 県の担当者によると、通行料導入前の昨夏に富士登山の安全対策などにかかった費用は約1億7千万円。このうち1億円は登山者からの任意の協力金(1人1千円)で賄ったが、残りの約7千万円は県税から支出した。

 これに対して通行料を導入した今夏は、5合目のゲートの設置、警備態勢や巡回指導の強化などで、支出は3億8千万円程度に増えたが、そのうち3億6千万円は通行料と協力金で賄うことができ、県税からの支出は約2千万円に減らせたという。

 県は、登山者の「受益者負担」をさらに進めることで、県民負担である県税の支出をできるだけ減らしたい考えだ。シェルターの設置など今後の安全対策に必要な資金の積み立ても通行料で賄いたいという。

 一方、平日と週末の通行料に差をつけることについては、週末を高く設定することで、登山者数の集中を減らす狙いもある。

 富士登山をめぐっては、静岡県も来夏から富士宮、御殿場、須走の3ルートで通行料を徴収する方針を表明している。山梨県は両県の連携を深めて情報共有を進め、環境省、地元関係者の意見も聴きながら検討を進めたいとしている。(豊平森)

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