石破茂内閣が発足した1日、経団連は選択的夫婦別姓制度に関するシンポジウムを東京都内で開いた。登壇者らは、政府が進める「通称使用の拡大」ではビジネス上の課題は解決されていないことなどを強調。制度の早期実現を求めた。
石破新首相は総裁選期間中、「実現は早いに越したことはない」などと制度導入に前向きな姿勢を示した一方で、「基本的に賛成だが、党内で真摯(しんし)な議論をさらに進めてコンセンサス(合意)を作る努力をすべきだ」とも述べ、反対派への配慮もにじませている。
経団連は6月、制度の早期実現を求める提言を公表。とりまとめを担った魚谷雅彦ダイバーシティ推進委員長(資生堂会長)は「石破総裁(新首相)は制度導入に前向きな姿勢をお持ちだと思っている。(選択的夫婦別姓を盛り込んだ)法制度が早期に国会で議論され、整備されることを期待したい」と発破をかけた。
導入に賛成する自民党内の議員連盟の事務局長を務める井出庸生衆院議員は「日本全体、経済界のこれからを切り開いていく一つの役割として何としても実現したい」とあいさつ。司会役の経団連幹部が「自民党として実現をよろしくお願いします」と念を押した。
シンポジウムでは、経団連や経済同友会の幹部から20代の実業家まで企業経営者など6人が、制度が未整備であることの不利益や実現した場合のメリットなどについて意見を交わした。
反対する保守系議員などの「旧姓の通称使用拡大で不都合は解消される」との主張に対し、サニーサイドアップグループの次原悦子社長は、パスポートがカッコ付きで旧姓を併記できるようになったことを例に、「入国審査などで『このカッコは何?』と本当に(よく)聞かれる」と反論。日本特有の仕組みが海外で理解されていないと訴えた。ICチップにはそもそも旧姓が記録されていないことからも、通称使用には限界があると強調した。
また、金融庁は金融機関に対し旧姓での口座開設を認めるよう要請している。しかし、大和証券グループ本社の田代桂子副社長は「マネーロンダリング(資金洗浄)と脱税のリスクがあり、私どももそうだが、大きな金融機関が口座開設時の通称使用は認めていないのが現状」と説明した。
経営者でクリエーティブディレクターの辻愛沙子さんは、「現在28歳。パートナーと結婚に向けての話をしている中で、一番の障壁になっているのが名字。同年代のスタートアップの経営者も事実婚が多い。『(制度導入には)慎重な検討が必要』などと反対派の議員らはよく言うが、かねて女性らが声を上げてきたものの、ずっと持ち越され続けてきた。簡単に『いつか』『慎重に』と言われても、こちらは明日、来年の生活が関係してくる」として、一刻も早い制度実現を求めた。【町野幸】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。