「今、“栄養負債が”日本人の健康に深刻な影響を与えています」

こう警鐘を鳴らすのは、『完全版 その調理、9割の栄養捨ててます!』(世界文化社)を監修した、東京慈恵会医科大学附属病院栄養部の濱裕宣さんと、赤石定典さん。

右から)東京慈恵会医科大学附属病院栄養部の濱裕宣さん、赤石定典さん
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「栄養素の一部は、時間をかけてコツコツ摂取して体内に蓄積していかないと、あとから健康に悪影響を及ぼします。私たちはこのことを“栄養貯金”と"栄養負債”と呼んでいます」(濱さん・赤石さん、以下同)

“栄養負債”のなかでも特に深刻なのは、鉄分とカルシウムの不足。

鉄分の不足は脳の発達に影響し、カルシウム不足は、将来の骨粗しょう症リスクを高めるとのこと。

はじめに、不足していることが体にどんな影響を与えるのかについて触れ、次にどのように補えば良いのか聞いていく。

鉄分は“頭の回転”に影響

“栄養負債”の代表格が「鉄分」。鉄分といえば、不足すると貧血になるというイメージがあるが、ほかにもさまざまな役割がある。

たとえば、鉄分はエネルギー代謝にも関わっており、鉄分が足りている人は、足りていない人に比べて19倍代謝がいいという。

また、鉄分不足は、女性ホルモンの減少や自律神経の乱れにも影響する。さらに、鉄分は脳の成長を支え、認知機能や記憶力を高めるために重要な役割を果たすという研究もある。

「鉄分が不足すると、16年後には約2.7倍の戦略的思考力に差がつくという最新のエビデンスがあります。子供の時から取っているかどうかで、20代以降に大きく変わるのです」

なんと、子供時代からの鉄分の蓄積が脳機能の差に繋がっており、24歳から明らかな差が広がっていくというのだ。

30代の蓄積率は0%!

次は骨を作るカルシウム。誰もが知る栄養素で、乳製品に豊富に含まれることも有名だが、じつは30代以降のカルシウム体内蓄積率は0%だという。

「これは非常に深刻な問題で、人生の後半になるとともに、骨粗しょう症のリスクが高まります」

年齢を重ねると、胃液の減少やホルモン分泌が低下するため、カルシウムの吸収率が悪くなる。そのため大人は、積極的にかつ効率よくカルシウムを摂取することが大切になる。

子供の頃からカルシウムを取ることが大事(画像:イメージ)

また、カルシウムは子供の頃に、いかにたくさん取るかで大人になってからの体内蓄積率に差が出るという。

「子供の頃にいかに取るかが大切。給食の牛乳をしっかり飲んでいた子は大人になっても骨粗しょう症になりにくいと言われています」

ほとんどの人に不足のビタミンD

カルシウムの吸収を助ける働きをするビタミンDについても、日本人の98%が不足していると言われている。

ビタミンDが不足すると、カルシウムを取っても十分に吸収されない。

また、ビタミンDは、免疫力アップ、糖尿病の予防、発がんの抑制に作用し、不足すると死亡リスクが12~13%上昇するという。

特に女性の不足が深刻な傾向があるというが、その理由は「日焼け対策」だ。

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