脱炭素化に向けて導入が進む再生可能エネルギー。中でも太陽光による発電量は着実に増えているが、いずれ設備が耐用年数を迎え、大量に排出される太陽光パネルの処理が社会問題となるのは必至だ。今から適正処理・再資源化のための仕組みづくりや、基準の整備が求められる。 (有賀博幸) 現在流通する太陽光パネルの大半は、太陽電池に結晶シリコンを用いた「シリコン系」で中国製。カバーガラス、太陽電池セル、バックシートを樹脂の封止材で貼り合わせた複層構造をしており、一式をアルミのフレームに収め、底に端子箱が取り付けられている=イラスト。型によっては部材に鉛やヒ素などの有害物が含まれる。
環境省が2022年度に全国の中間処理業者に行った抽出調査(有効回答41社)では、回収された太陽光パネルは2304トン(11万5千枚)で、約60%が不良品や災害によるものだった。多くは中古品としての再利用やリサイクルで再資源化されたが、まだ回収量が少ない上、調査外で単純に破砕して埋め立て処分されているケースが相当数あるとみられる。 発電事業者やパネルメーカー、リサイクル事業者ら約50社で構成する「太陽光パネルリユース・リサイクル協会」(東京)の細田雅士事務局長は「現状は業界内にリユースやリサイクルの十分な基準がなく、未成熟な状況」と認める。 国内の太陽光発電は、再生可能エネルギーを固定価格で買い取る「FIT制度」が始まった12年度以降、急速に普及した。パネルの耐用年数は20~30年とされ、環境省の予測では30年代に入り排出が一気に増加。ピーク時には最大で年間50万トン(約2500万枚)近くの排出を見込む=グラフ。
このため、環境、経済産業の両省は9月中旬、使用済み太陽光パネルの廃棄・リサイクルに関する合同の有識者会議を初めて開いた。本年度内に数回の会議を予定し、仕組みづくりや、排出量の平準化によるピーク時の量の抑制、費用負担のあり方、有害物質の処理といった課題について議論する。 協会の細田事務局長は「現行の廃棄物処理法以外に、家電リサイクル法や自動車リサイクル法のような個別法を整備する必要があるのでは」と指摘。業界としても、先んじて実態把握やリユース・リサイクルの基準の策定などに取り組む構えだ。
◆ガラス精製 本格事業へ 中電系企業と愛知海運
太陽光パネルの再資源化に向け、全国で事業化の動きや実証実験が始まっている。このうち中部電力グループのシーエナジーと、愛知海運(ともに名古屋市)は昨年2月、共同出資会社を設立し、愛知海運蒲郡支店(愛知県蒲郡市)内にガラス破砕型のリサイクル装置を導入した=写真。 油圧とローラーでアルミフレーム、ガラス、発電セルなどを剝離し、分別・回収。砕いたガラス片は色選別や金属検知などを経て2~5ミリ程度の白い粒状ガラスに精製する。処理能力は1日約9.5トン(475枚)。事業開始から9カ月間に処理したパネルは、主に中電グループの発電サイトから搬入された約2千枚にとどまるが、2030年代後半には年間12万枚程度の処理を目指す。 愛知海運事業戦略室の鈴木英司課長は「パネルによって劣化度が違い、機械の調整に苦労する。本格的な事業化に向けデータを集めるとともに、関係事業者間のネットワークを築いておきたい」と話す。
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