手のひらに収まりきらないほどのサイズの岩ガキ=愛知県田原市で

 愛知県の南端に位置する渥美半島。太平洋と三河湾に挟まれ、一帯はアサリやミル貝、タイラギといった貝類が豊富に採れる日本有数の産地として知られる。  春の終わりから夏にかけてシーズンを迎えるのが、天然の「岩ガキ」だ。冬が旬の真ガキに比べ、6~8月に最もおいしい時期となるため、「夏ガキ」とも呼ばれている。  最大の特徴は、その大きさ。渥美半島産の貝類を専門に扱う水産会社「浩漁水産」(同県田原市)で、仕入れ担当の天野晟杜(じょうと)さん(27)が見せてくれたのは、手のひらに収まりきらないほどのサイズの岩ガキ。計量すると1キロを超えた。ゴツゴツした分厚い殻で身を守りながら「5年ぐらいかけて育つ」という。  太平洋側で岩ガキ漁をする漁師の男性(48)によると、海岸の沖合に設けられた離岸堤や岩場で深さ数メートルほど素潜りし、バールとハンマーを使って1個ずつ収穫する。「岩や海藻と瞬時に見分けることがこつ」。体ひとつでの作業は常に危険が伴うため、波や水流など海のコンディションには細心の注意を払う。  同社では、仕入れた岩ガキを地下海水に10日間浸してから出荷している。天野さんによると、三河湾の海水が地中深くに染み込み、自然にろ過された「ほぼ無菌状態」の地下海水がカキの体内を循環。カキが海水を吸ったり吐いたりする作用を利用して浄化し、「より安心して食べてもらえるようにしている」という。  こうした処理を経た岩ガキは、名古屋や東京を中心に各地の市場などに運ばれるほか、併設の直売店でも販売。同県豊田市から家族で訪れた会社員男性(26)は「この時期の楽しみ。大きくて甘くて、ぷりぷりの食感がたまらないですね」と笑顔を見せた。天野さんは「他県のブランド化されたカキに比べ、まだ知られていないので、たくさんの人に食べてもらい、全国的に有名にしていきたい」と力を込めた。  文・写真 川合道子

◆味わう

 愛知県田原市の「浩漁水産」では、併設の直売店「あさり屋浩漁」で岩ガキを直接購入できるほか、その場で生ガキや焼きガキ、みそ鍋で味わえる=写真。生ガキは定番のレモンのほか、「ごま油に塩をかけても合う」と、店頭に立つ天野さん。焼きガキはポン酢しょうゆに、もみじおろしで味わうのもお勧めという。直売店は土曜のみ営業。5月3~5日は開く。岩ガキの購入は、電話やインスタグラム(「あさり屋浩漁」で検索)のダイレクトメッセージから注文可。価格は大きさで異なり、1個500~千円(税別、送料別)。(問)浩漁水産=電0531(32)1164


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