新生活で、大人も子どもも心が落ち着かないこの季節は、生活環境も乱れがち。
子育て中の家庭からは「子どもが散らかすので、余計に家が片づかない」という声が聞こえてきそうだ。
さらには「保育園ではちゃんと片づけるのに、家では散らかしっぱなし」なんて思ったことはないだろうか?
保育園や幼稚園で取り入れているコツを知れば、家での片づけがもっと楽になるかもしれない。現役保育士で育児アドバイザーのてぃ先生に話を聞いた。
遊びを中断してほしいときの声かけ
食事やお風呂などの時間になって「おもちゃ片づけて」と言う場面がたびたび訪れる。集団生活で時間管理を行う園では、どう工夫しているのだろう。
「遊びを中断して片づけてほしい時は、できるだけ関連づけた声かけをするようにしています」と、てぃ先生。
この記事の画像(5枚)「例えば、部屋でおままごとをしていて、園庭に出てほしい時に『先生と外に走りに行こうよ』と言っても、今やっている、おままごとと何も関連がないから魅力的には映りません。
そういう時は『次は、お砂場でケーキ作ろう!』と声をかけるんです。今の遊びの続きで『楽しいこと』を持ってきて、次の行動に誘導するのが大事です」
例えば、子どもがおままごとをしていて、そろそろ夕食の時間だと思ったら「今度は、キッチンでいっしょにキャベツちぎろう」と誘って片づけを促してみる。
電車遊びをしている子どもをお風呂に誘うときは、電車ごっこと称して「片づけてから、“お風呂駅”まで電車でいこう」と提案する方法がありそうだ。
声をかけるタイミングを見計らうのも大切だ。
「動いてほしい時間から10分、15分でも余裕を見て、その時間内で切れ間を見つけて声をかけてみてください」
遊びにのめり込んでいるタイミングでは伝わりづらいため、ぜひ試してみてほしい。
子どものモチベーションを高めるには?
親子で片づけをする際に、子どものモチベーションを高めるためには「子どもに教えてもらう」ことがおすすめだという。
ただし、大人がわざとらしく「ブロック、どこに入れるんだっけ?忘れちゃった」などと言っても効果は薄いそうだ。
子どもが「片づけさせようとしている」と察するため、行動につながりづらい。あくまで本人の自発的な行動を引き出すことが必要になる。
「例えば、ブロックを入れる箱に人形を入れたり、絵本の棚にままごとの小物を入れたりして大人がわざと間違えてみてください」と、てぃ先生。
子どもがその間違いに気づくと「ブロックはこっちじゃないよ。あっちだよ」と教えてくれて、自然と自分で片づけてくれることが多いという。
「普段、子どもっていつも大人に教えられる側ですよね。心理的には、いわば『マウント取られている側』です。
なので、逆に親御さんに『教える』立場になると積極的に片づけをしてくれるはずです。大人のミスが、子どもの『行動したい』という気持ちをくすぐりやすいのです」
保育園では片づけられるのに…の理由
「お子さんたちは、幼稚園、保育園では頑張っているんですよ」と、てぃ先生。
「お家での姿が、おそらく本来のお子さんたちの素の姿です。大人だって会社にいる姿とは違い、家ではダラダラ過ごしますよね。子どもも、それと同じです」
確かに、常に一貫した姿勢を求められては、大人だって息苦しい。
「園ではできて、家でやらないのは、家の中がちゃんと居心地よい場所だから。お子さんにとって、ママやパパがちゃんと甘えられる存在である証拠です。だからお子さんたちも素の姿を出せるわけですよね」
もちろんそれは、外で頑張っているからなんでも許そう、という意味ではない。
「ここまでは許容しよう、という範囲は各ご家庭で、特にパートナーの方と話し合って決めておくのがいいと思います。
ただ、片づけだけではないですが、親御さん両方が同じ対応をするのはもったいないと考えています。
例えば『パパなら、ママなら、こう言えばもっと遊ばせてくれる!』など、ある意味で子どもの交渉力を育むこともできるのです」
大人も子ども、ある程度ブレていてもいい、と決めてみる。それが、片づけのみならずあらゆることにおいて、ストレスの少ない考え方になりそうだ。
てぃ先生
現役の保育士でありながら、フォロワーが180万人を超えるインフルエンサーとして活躍。その専門性を生かし、子育ての楽しさや子どもへの向き合い方などをメディアなどで発信している。著書は『子どもに伝わるスゴ技大全 カリスマ保育士てぃ先生の子育てで困ったら、これやってみ!』『子どもにもっと伝わるスゴ技大全 カリスマ保育士てぃ先生の子育てのみんなの悩み、お助け中!』(ともにダイヤモンド社)など多数。
取材・文=高木さおり(sand)
イラスト=さいとうひさし
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