新たなインフルエンザワクチン「フルミスト」はスプレーを鼻の中に入れ、直接吹きつけるタイプのワクチンで、去年、国の承認を受け、今月から接種できるようになりました。

血液の中だけでなく、ウイルスの侵入経路となる鼻やのどの粘膜にも抗体を作る作用があり、従来の注射するタイプのワクチンと同じ程度の効果があるとされています。

東京 港区の小児科のクリニックでは今月7日から、このワクチンの接種を開始し、早速、接種を受ける親子が訪れていました。

このワクチンには毒性の弱いウイルスが含まれているため、医師が家族に妊娠中の人がいないかなどを確認したうえで、細い棒状のスプレーに入ったワクチンを左右の鼻の穴にそれぞれ吹きつけました。

接種を受けた5歳の女の子は「注射より痛くなく、優しい感じがしました。次もスプレータイプのほうがいいです」と話していました。

女の子の母親は「娘は注射を打ったあとかゆみが出やすい体質なので、今回はスプレータイプを選びました。接種も1回で済むのでスケジュール管理もしやすく助かります」と話していました。

「クリニックばんびぃに」の時田章史院長は「注射への恐怖心から暴れたり逃げたりする子もいて、ワクチン接種を諦めていた親もいる。このワクチンは痛みを伴わないため、痛みが苦手な子どもにとっては非常に有効だと思う」と話していました。

◇スプレータイプのインフルエンザワクチンとは

新たなインフルエンザワクチン「フルミスト」はワクチンを直接、左右の鼻の穴の中に吹きつけるスプレータイプのインフルエンザワクチンです。毒性の弱いウイルスを使った「生ワクチン」で、国内では去年、2歳から18歳までの子どもを対象に承認されました。

インフルエンザウイルスは主に呼吸器を介して感染しますが、鼻にワクチンを接種することで、血液中だけでなく感染経路となる鼻やのどの粘膜にも抗体をつくることができるということです。

接種回数はシーズンごとに1回で、注射の必要がないため痛みをいやがる子どもでも接種が期待できるとされています。

国内で行われた臨床試験では、このワクチンを接種した人は接種しなかった人と比べるとインフルエンザを発症するリスクが28.8%減少したということです。また、販売元の製薬会社によりますと、海外のデータではすでに使われている注射するタイプの不活化ワクチンと発症を予防する効果はほぼ同じだったということです。

一方、国内の臨床試験では67.9%の人で何らかの副反応が見られ、鼻づまりやせきなどかぜに似た症状が報告されているほか、まれにインフルエンザで発熱する人もいたということです。

日本小児科学会 使用に関する考え方を公表

日本小児科学会は先月、このワクチンの使用に関する考え方を公表しました。それによりますと、このワクチンは2歳から18歳までの人が接種の対象ですが、毒性の弱いウイルスを使っているため、妊娠中の人や免疫不全の人などはスプレータイプのワクチンを使わず、注射するタイプの不活化ワクチンのみを使うよう推奨しています。

また、周囲の人がワクチンに含まれる毒性の弱いウイルスに感染する可能性があることから、授乳中の人や周囲に免疫不全の患者がいる場合も注射するタイプのワクチンを推奨するとしています。

このほか、ぜんそくの人はスプレータイプのワクチンの接種後に呼吸をするとき「ゼーゼー」といった音がする「ぜん鳴」の副反応が起こる可能性があることから、注射するタイプの不活化ワクチンを推奨しています。

日本小児科学会の予防接種・感染症対策委員会の多屋馨子委員長は「スプレータイプのワクチンは注射によるワクチンと有効性は変わらないという結果が出ているので、子どもの健康状態をよく知っているかかりつけ医と相談して、どちらのワクチンを接種するのか選んでほしい」と話しています。

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