大阪府四條畷市の東修平市長(36)が「後継候補を全国から公募する」と発表した。東市長は7年前、当時最年少の28歳で当選し、就任後は7年連続で転入が転出を上回り、高齢化率の低下や財政の健全化などの実績を残してきた。
【映像】後継候補の条件・選考方法
しかし「長く権力を持つと腐敗する」との理由から、全国から求人サイトで公募すると決めた。選ばれた人物には、選挙のノウハウを伝えるなどの支援を行う。「市民にとってよりふさわしい人物を見つけ出す必要がある。知っている人の中に必ずしもふさわしい人物がいるとは限らない」と、その理由を語る東氏に、『ABEMA Prime』では市長候補選びと、新しい政治家の作り方を聞いた。
■当時最年少28歳で当選した敏腕市長が考えた後継候補の公募とは
東市長は1988年に四條畷市に生まれ、2014年に京都大学院(原子力を学ぶ)を卒業し、外務省へ入省した。翌年、野村総合研究所インドへ入社し、企業の戦略策定を支援。2017年に市長選に出馬し、2020年に再選した。
後継者を全国公募する理由は、大きく3つある。まずは「首長は全国からやる気のある人材を引き入れやすい」こと。居住3カ月以上などの要件もなく、首長は経営者=最もふさわしい人がなるべきとの考えからだ。次に「無投票ではなく市民に選択肢を与える」。同時にやる気のある立候補者をサポートする。そして「好循環のうちに引き継げば、課題解決にもつながる」。現在、支えてくれる職員は50代のため、定年を迎える前に新市長と共に改革を担ってほしいとの思いがある。
2期の実績について「数字としては上向いている」という東市長は、なぜ3期目を目前に「財政健全化が進み、これから投資のフェーズに入るが、市民としては『同一リーダーが行うのは難しい』との感情が浮かぶ」と説明した。
人事面でも区切りを迎える。「伴走してきた部長級職員が、50代後半を迎えている。4年後には役職定年で管理職を外れてしまうため、市政が不安定になる可能性が高い。決めるなら今だと考えた」という。
前明石市長で弁護士の泉房穂氏は、東氏を「頑張っている」と評しながらも、「私は3期12年で区切りを付けた。もう1期くらい財政健全化を進めて、それを原資に新しい市民サービスをやってもいいのではないか。もったいない」との感想を述べる。
■全国から市を「経営」できる人を市長候補に
東氏は先月、「長く権力を持つと必ず腐敗する」ことを理由に、次期市長選に立候補しない意向を表明した。後継候補の公募は、東氏の政治団体「四條畷市民の力」が民間の求人サイトで行っている(9月25日〜10月15日)。条件は満25歳以上の日本国民(海外居住可)で、選考は書類選考、東氏によるオンライン面接、市民を交えた面接を経て、合議で決定される。後継となった人物には、情報量の差を埋め、フェアに選挙できる体制をサポートする。
望ましい人物像については、海外の“シティーマネジャー制度”を引き合いに出す。「行政のプロが議会や市民から選ばれ、町を運営していく。市長は人事権や予算といった大権を預かっているが、本来はより経営に優れた人物の方が、いい市政になり得る。しかし現行は、『市長になりやすい人が市長になる』構造だ。経営能力を持つ人物が市長になる方が、世の中が良くなるのではないか」と述べた。
泉氏も1年前、市長退任に合わせて公募を行った。「市長と市会議員、県会議員を公募しようと思ったが、結果的に市長はしなかった。市長は公募せず、自分が『この人』と思う人を応援する。その代わり、議員は幅広い人材がいいと思った」と振り返る。
これに東氏は、「僕は『市長だけ』と、明確に線を引いている」と返す。「全議員と同じ対話、同じ情報提供を行い、公平に支援していきたい。同じ政治団体から市長と議員を出すと、関係性が近くなる。それが良い場合もあるが、四條畷市では“市長与党”のいない運営形態が望ましいと感じる」。
■公募で選んだ候補者、その後どうなる?「政策は歪めない。サポートはする」
市長は「教育から下水道」まで、あらゆる領域を見る必要がある。「福祉ひとつ取っても、高齢福祉と児童福祉、障害福祉は法的に違う。これらをキャッチアップする苦労はある」。ただ一方で、後継者が決まっても“院政”になるだけではとの指摘もある。東氏は「今回の政治団体は、あくまで市長が幅広い人々から選ばれる枠組みだ。政策やイデオロギーのために自己拡大する“政党”とは異なり、政策を主張する考えは一切ない」と説明した。
サポートの内容については、「8年間の取り組みで、『市長として踏んではいけないボタン』に気付いた。これは事前に伝えるべきで、その道を選ぶなら助言したい」としながら、「政策まで歪めたら、二重権力と言われかねない」とも語る。
どれだけの期間、サポートを続けるのか。「取り組む課題による。5年計画の取り組みは、1年目に伝えきれない。中間地点でアドバイスすることもあるだろう」。これに泉氏は「私は、当選までは全面応援したが、通ったら一切口出ししていない」と返す。「議会や役所には、長年の慣習がある。方針転換や、調整の有無など、いろいろあるのではないか」と主張した。
■さながら米大統領選 候補者決めから市民に見える形を
後継は合議制で決めるが、東氏は「私の後援会に入っていないなど、中立な人に選んでもらう。私がいいと思う人と、合議の結果が異なる可能性もある」と説明する。「選挙は基本的に、1週間の市長選で『AさんかBさんを選びましょう』となるが、今回の取り組みは市民が『どんな人が公募に来るか』『市長はどんな人がいいか』と会話することに価値がある。市長に適した人物を考えることが、民主主義を鍛える一歩になる」。
とは言っても、“出来レース”と指摘される可能性もある。「公募の後に、もう一度しっかり選挙が行われる。取り組みに疑問を持つ人が、一定数を超えれば選ばれない。アメリカでは大統領選に向けて、候補者選定から、候補者同士の議論が行われる。日本では、いざ選挙が始まってからしか活動できない」。既に200人を超える希望者が集まっているという今回の公募。締め切りは15日だ。
(『ABEMA Prime』より)
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