地面に落ちたミカンを時間内に拾い集める量を競うスポーツができないか?ミカンが特産の静岡県の高校生が地元の農家を支援するビジネスプランを考えた。農作業をスポーツにする“アグリスポーツ”だ。観光客も楽しむことができれば一石二鳥の地元支援策になるのだが…。

農業×スポーツで“アグリスポーツ”

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伊東市の農園で、摘果(果実の間引き)によって地面に落とされたミカンを拾い集める4人の高校生。

彼らは伊豆伊東高校の3年生で、授業の一環として農家の高齢化や後継者不足といった課題の解決に向け、農作業をスポーツ競技として普及させる“アグリスポーツ”に取り組んでいる。

伊豆伊東高校3年・利渉美結リーダー:
農家の話を聞いて収穫作業に困っていたり、収穫作業以外にも土おこし、草取りや摘果作業などもとても大変な作業なので「困っている」という話を聞いて、少しでも助けられたらと考えた

伊東市内には2022年3月末時点で594戸の農家があり、そのうち販売を目的とした農家は254戸、自給のための農家が340戸だ。

ただ、県の調査では販売目的の農家254戸の半数以上が65歳以上の高齢者で、さらに約6割の157戸で後継者がいないことがわかっている。

このため、観光客を呼び込み農業への興味を持ってもらうとともに、参加者の体力強化や農家の収入向上にもつなげようと着目したのがアグリスポーツだ。

ミカン拾い競争をやってみたら…

この日は都内で農業関連の事業を展開し生徒たちのアドバイザーを務めるクリエイト・アグリの高橋幹太代表も、デモンストレーションの様子を視察に訪れた。

高橋代表は「小さな耕作面積でも収益を上げる農家が増えているので、その先駆けを実践してもらい、何か新たな価値を見い出せれば、もっと広がってゆくと思う」と、高校生たちを激励する。

競技はいずれも地面に落ちたミカンを拾う競争で、10分間に拾い集めた重さを競う「摘果ミカン回収重量戦」の個人戦と団体戦、そしてちょうど10kgをめざす「目指せジャスト10kg」の個人戦の3種目だ。

生徒たちは慣れない作業に真夏の暑さも加わり、農家の苦労を肌で感じている様子だ。

伊豆伊東高校3年・島津脩さん:
暑い中、農家の人たちがやっていると考えると、本当にすごいなと思う。ずっとしゃがみっぱなしなので疲れる

伊豆伊東高校3年・中村友花子さん:
ただ作業をするだけでなく、競ってやっているから楽しい。足が鍛えられる

ミカン農家・鈴木甲子さんは「今まで私たち考えたこともなかったので、若い人たちはすごいと思う。 こういう風にやってくれるとありがたい」と喜ぶ。

見えてきた課題 改善に意欲

また、デモンストレーションを通じて実際にビジネスとして展開していくための課題も見えた。

リーダーの利渉美結さんは「きょう3回やったが勝負をもっと競うように形を変えたい。若い人が農業をする機会が少ないと思うので、若い人にも興味を持ってもらえるようなプランにしていきたい」と話す。

クリエイト・アグリの高橋幹太代表は「いろいろな農業の形があってもいい。例えば、アグリスポーツの体験料を取るとか。いま農業は人手不足も深刻なので、その1つとして手伝ってもらうことで、より経営的にも発展性があるかなと思う」と、高校生たちのさらなる検討に期待する。

農家から見た課題の指摘も

デモンストレーションから4日後、高校生たちは講師の指導を受けた。

未来創成学院・三宅範行 講師:
「このプランで何を解決しようとしているか明確ではない」というアドバイスが銀行から来たらどうしますか? 皆さんは何をこのプランで解決しようとしているのですか?

生徒たちが「農家の課題も解決しながら、観光客増加の課題も解決するプラン」と説明すると、講師は農家から見た課題を指摘した。

未来創成学院・三宅範行 講師:
農家の立場からしてみれば(アグリスポーツで)商品に傷をつけられても困るから、商品の収穫作業はちょっと任せづらい

体験したミカン拾い競争は地面に落ちたものを集めたが、収穫期の果物を対象にするとなると課題があるという指摘だ。

農家が助かり観光客も楽しめる

伊豆伊東高校の生徒4人は課題の解決に向けてさっそく動き出した。

伊豆伊東高校3年・利渉美結リーダー:
やはりビジネスとして参加料をどこから取るかや いくら取るかなど、まだまだ未完成な部分が多かった

伊豆伊東高校3年・島津脩さん:
自分たちでは結構うまくできていると思ったが、話を聞いたら甘いところが多かった。もっと細かくゲームの内容を決めていけば、農家にも良いことがあるし観光客も楽しんで農作業ができると思う。頑張ります

まだまだ修正すべき点も多いビジネスプランだが、こうした高校生の感覚や発想が農業の未来を切り開く1つの糸口になるかもしれない。

(テレビ静岡)

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