国産米を原料にして作られたフォー=東京都内で

 つるっとして、もちもちした食感。かむと、口の中に優しい甘みが広がった。  国産米を原料にしたフォー(米麺)。米穀店を発祥とするシマダグループの系列会社「シマダハウス」(東京都渋谷区)が手がける。「あえて厚めの麺に仕上げているので、コメの風味を感じてもらいやすいのでは」と飲食事業を担当する石島達也さん(41)。  同社は2001年、「日本の食文化に根付くコメを新しい形で届けたい」と都内にフォー専門店を開業。十数年間は本場のベトナムから輸入して使っていたが、国産の製品を開発しようと生産者団体などと研究を重ねた。  主食用米の代表的な品種「コシヒカリ」などを試す中で、たどり着いたのが農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が開発した米粉用米の新品種「亜細亜のかおり」だった。通常のコメに比べてでんぷんの一種「アミロース」の含有量が多く、ゆでても溶けにくい性質などがあるため、麺づくりに適しているという。  こだわったのは麺の厚さだ。「うどんのように食べ応えのある麺に」と、一般のフォーの厚さに比べて1・5倍ほどもある3ミリ超に。製法はベトナムにならい、米粉や水などを混ぜた生地を平らに整え、ベルトコンベヤー方式で蒸す。乾燥させた後、細長くカットして仕上げる。  同社によると、アレルギー症状を起こすグルテンが含まれていないため、うどんやラーメンなどが食べられない人にとっても安心という。都内には給食用として提供している介護施設や保育園もある。  原料の稲作は、新潟県上越市の農家でつくる「上越米粉研究会」が担う。石島さんによると、産地では高齢化や主食用米の消費量減少で田んぼを維持できない農家も目立つという。「ご飯だけでなくフォーも食べてもらうことで、コメの産地を守ることにもつなげたい」と力を込めた。  文・写真 川合道子

◆味わう

 シマダハウスが運営するフォー専門店「コムフォー」では、人気の「国産鶏のフォー」など9種のメニューが並ぶ。期間限定の「博多地鶏のスープカレー米麺」は、農林水産省がコメの消費拡大を目的に各地の飲食店と取り組む「米粉を使ったグルメフェア2024」の賛同商品。11月30日まで味わえる。  麺やスープ付きの商品は、店頭のほかコムフォーのオンラインショップでも手に入る=写真。広報担当者は「これからの季節は鍋などの具材としてもお薦め」と話している。


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