シマリスの赤ちゃんがペットショップなどで販売される時期となっている。見た目が愛らしいシマリスの姿を見て「飼いたい」という衝動に駆られる人もいる。しかし、シマリスには、飼育の上での難しさも多い。シマリスの生態を熟知した「シマリスカフェ」の店主に、「安易なお迎え」をしないことの大切さを聞いた。
日本でペットとして流通しているシマリスは、ほとんどが中国から輸入されており、3月の終わりから5月中にかけてペットショップなどで赤ちゃんのシマリスが流通する。店頭やSNS(ネット交流サービス)で愛らしい姿を見て、「衝動買い」をしてしまう人もいる。
しかし、シマリスは飼育上の難しさがいくつもある。東京都内で「シマリスカフェ~アースのおみせ~」を経営し、その生態を熟知する酒井孝洋さん(43)に聞いた。
SNSなどでは、人間に非常になれている、いわゆる「ベタなれ」のシマリスの姿も投稿されている。しかし実際には、性格は個体差が激しく、人に決してなれない個体もいる。そして、「タイガー期」と呼ばれる、突然凶暴になる時期もくる。
病気になったときに診てくれる動物病院も限られている。上下運動をするため、お迎えには十分な高さのあるケージが必要だ。また、少しの隙間(すきま)があれば脱走し、捕まえるのは一苦労する。逃げ出したまま電気コードをかじって感電死したり、エアコンの隙間に入り込み巻き込まれて死んだりしてしまう事例もある。
よく調べることなく「衝動買い」し、タイガー期に驚くなどした飼い主が、飼育放棄をするケースは残念ながら後を絶たないという。酒井さんによると、生きたまま、ケージごと集合団地のゴミ箱に捨てられていたケースもあったという。また、東京都内であれば代々木公園や上野公園のような大きな公園にシマリスが逃がされることはざらにあるという。ペットとして売られているシマリスは野生では生きていくことができず、外来種で生態系に影響を与える恐れがあり、外に逃がすことは厳禁だ。
酒井さんの店は、シマリスの可愛さと飼育の難しさの両方を十分に知ってもらうような運営をしている。生体販売は一切していない。「手乗り体験」もできるが、決して「ふれあい」がメインではない。飼おうか迷った上で店を訪れたが酒井さんの説明を聞いて断念し、その後は店に通ってシマリスと交流することに決めた客も多い。一方、熟慮の上で「お迎え」した客や、以前からの飼い主にとっては、飼育の悩みや情報を共有できる場所となっている。
酒井さんは「このカフェを作ったのは、ライトなイメージの動物カフェの概念を壊したかったことがある。『SNSにアップするために写真を撮って終わり』にはせず、2時間制という十分な時間の中で楽しんでもらいながらも、勉強にもなるような空間を目指している」と話す。【町野幸】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。