子どもの心身の発達に欠かせないおもちゃ。各メーカーが、持続可能な開発目標(SDGs)を意識した商品作りに励んでいる。原料に使う「おもちゃ専用米」から育てるケースもあれば、遊びを通して環境配慮について学べるよう工夫した商品も。安心して子どもたちが成長できる世界を引き継ぎたい、との思いがその根底にある。 (石川由佳理)

黄金色の稲穂が実ったピープル農場。収穫した米がおもちゃの原材料になる(ピープル提供)

 「お米のおもちゃ、育てています!」。横断幕とともに、黄金色の稲穂が実る田んぼで満面の笑みを浮かべるメーカーの従業員ら。米、おもちゃ、育てる-。通常は結び付くことが少ない言葉が並ぶ背景には、赤ちゃんの安全と耕作放棄地解消への願いがある。  乳幼児向けおもちゃを企画販売するピープル(東京)は、2010年から、米由来のプラスチック「ライスレジン」を使った「お米のおもちゃ」シリーズを取り扱う。食用にならない工業用や、精米時に出る破砕米などを原料に使用。歯固めや積み木など、これまでに130万個以上出荷したロングセラーだ。  開発当時、中国の食品偽装問題などで食の安全が危ぶまれた。赤ちゃんが口に入れても安全な素材を追求する中でライスレジンに出合った。発売から10年後の20年、より米を知ろうと、新潟県南魚沼市に社員がおもちゃ専用米を作る「ピープル農場」も設けた。  コロナ禍もあり、本格始動は22年。5月に社員数人で田植えをし、8月には稲刈り。収穫した米は積み木に生まれ変わった。昨年は社員の家族も参加し、農場に子どもの歓声が響いたという。  入社直後に農場の「プロモーション担当大臣」に任命された片桐祐人さん(27)が、現地で気付いたのは、農家が減り耕作放棄地が増えている現実。「米の消費量が減る中、食用以外の販路が生まれることに、農家の人からありがたいと言ってもらった。おもちゃ作りが農家の支援にもつながっている」と語る。

「メガブロック グリーンタウン」シリーズを紹介する久保田さん=東京都千代田区

 米国の玩具メーカー、マテルが開発し、昨年4月に日本で発売したのは、環境に配慮した暮らしを体験できる「メガブロック グリーンタウン」シリーズだ。大きめのブロックを組み合わせて遊び、1歳以上が対象。ごみの分別▽電気自動車▽農場の仕事▽自然エネルギーの4テーマで商品を展開する。  ごみの分別では、ブロックを色別に仕分けし、同じ色のごみ箱ブロックに入れて収集車へ。牛乳パックや紙のブロックはリサイクルに回す。遊びを通して、ごみの減量や再資源化について学べる。同社日本法人の久保田恭弘さん(41)は「子どもをSDGsの活動に参加させたいが、親がうまく説明できないという声が多かった。なぜ、ごみを分別するのかという問いに対し、自然に話ができる」と狙いを語る。  素材も徹底的に吟味した。ブロックは植物由来の原料やバイオマスプラスチックで製造。パッケージと説明書は、適切に管理された森林からの製品であることを示す「FSC認証」の紙を使った。合わせてカナダの森林保全活動を支援することで、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル認定商品」として、おもちゃでは世界初となる認証を受けた。  「持続可能な暮らしを知り、当たり前の習慣にするきっかけになれば」と久保田さん。遊びを通じて将来の世代に思いがつながることを期待する。


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