ゴールデンウィークは「10年に1度レベル」の高温になる見込み…気象庁は4月25日、「高温に関する早期天候情報」を発表した。さらに、その2日前に発表した3カ月予報によると、今年は5月から7月にかけて、全国的に気温が高くなる見込みとのこと。すでに30度を超える真夏日を記録した地域もあり、今年も猛暑は避けられそうにない。となると心配なのが熱中症だが…
 
「熱中症は5月から注意と準備が必要です」
こう話すのは、「小森こどもクリニック」の小森広嗣院長。「この時期は、急に暑くなったり、昼夜の寒暖差があったりするので、体がなかなか順応できず、熱中症にかかることがあるのです」と注意を促す。対策のポイントを聞いた。


■子どもは汗腺が未熟

【小森こどもクリニック・小森広嗣院長】
 急激な温度変化に順応できず、体温調整機能がうまく働かないと、体から熱を逃がせず、体温が上昇して、熱中症になってしまいます。特に子どもは注意が必要です。子どもは汗腺が未熟で体温の調整機能が十分でないので、熱中症になりやすいのです。

 熱中症の予防には、「汗をかける体になる」ことが重要です。よく、熱中症対策として、「水分をとる」「涼しい所で休む」などと言われます。もちろん大切で実行すべきことですが、その前にまず、「暑さに慣れ、汗をかける体になる」という基本的なことが必要なのです。


■まずは「暑熱順化」…汗をかける体になること

 体を暑さに慣れさせることを「暑熱順化」と言います。暑熱順化すると、低い体温でも汗をかけるようになり、汗の量が増えます。さらに皮膚の血流も増加するので、熱が逃げやすくなり、体温の上昇が防げ、熱中症にかかりにくくなります。

 しかし、最近は、うまく汗をかけない子どもが増えているように思います。


■どこでもエアコン…整った環境が順化を遅らせる

 原因は2つあると考えられます。1つめはライフスタイルの変化。外で遊ぶ子どもが減り、家庭でも学校でもエアコンが効いている。「暑い中で過ごし、汗をかく」という、昔なら当たり前だった経験をしない子どもが増えているのです。

 2つめは気候の変化。体感ですが、自分の子どもの頃と比べて、急に暑くなったり寒くなったり、体温を超えるような暑い日があったりと、日々の気温の変化が激しくなっている気がします。徐々に暑くなっていった昔の気候なら、自然と暑熱順化できていたのかもしれません。昔は、生活の中で普通に汗をかいていましたし、それこそ夏の日中は汗だくで過ごしていたものです。

 今は、うまく暑熱順化ができていない子どもも多く、意識して「暑熱順化」させないといけません。


■「暑熱順化」は無理なく楽しく その方法は?

 では、どうすればいいのでしょうか。ポイントは、「楽しみながら」「無理なく」「徐々に慣らしていく」です。そして、「継続すること」が重要です。残念ながら、暑熱順化した体は、数日間、暑さから離れると元に戻ってしまいます。ですから、続けるためにも、楽しみながら、無理のない範囲で行ってください。また急激に頑張ってしまうと、かえって体調を崩してしまう心配があります。最初は5分とか10分、じんわり汗をかく程度でもよいので、少しずつ体を慣らしていってください。

【暑熱順化の方法】
*外に出る
 お散歩でも、外遊びでも、サイクリングでも良いです。まずは5分とか10分とか短時間、外に出てみて、汗がかけるか、チェックしてみる。体の状態をみながら少しずつ時間を増やし、徐々にたくさん汗をかけるようになっていってください。

*入浴(湯ぶねにつかる)
 これも短い時間から、無理のない範囲で行ってください。

*食事
 温かい料理や発汗作用のある料理で汗をかくこともおススメです。

 現代は、子どもだけでなく、大人も発汗作用が弱っていると思いますので、家族で一緒に暑熱順化を楽しむ。また、1日おきや3日に1回でも、自分たちに無理のない範囲で続けることが大切です。

■発汗と水分補給はセット

 そして、しっかり汗をかいたら、かいた分だけ水分を摂るのを忘れずに。発汗と水分補給はセットです。絶対に忘れないようにしてください。

 豊かな時代の中にあって、意識しなければ身につかない「汗をかく力」を、家族みんなで、楽しく、こつこつ、積極的に育て、強くたくましい体を作っていって欲しいです。そして、暑さに負けず、猛暑にも対応できる力を身につけ、暑さの中でも楽しめる、健康で、元気いっぱいのお子さんやご家族が溢れる社会を目指しましょう。
(小森こどもクリニック・小森広嗣院長)


■運動会などの行事に向けても「暑熱順化」を

 消防庁の「熱中症による救急搬送状況」によると、5月に熱中症で救急搬送された人が初めて記録された2015年以降、毎年のように5月にも多くの人が救急搬送されている。

 それほど気温が高いと感じない日でも、熱中症は子どもを襲う。背景には「汗をかく力」を高めることが難しい現代の暮らしがありそうだ。5月に運動会などの行事を行う学校も多い。「暑熱順化」を意識して進めることをおすすめしたい。

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