不登校の小中学生の数を調べる文部科学省の調査の項目が、次回の2023年度分から見直される。いじめなど不登校の要因を教員が把握できていない場合、「無気力・不安」といった児童生徒側のみに課題があるかのような選択肢を選んでいた可能性があるためだ。見直しの理由や変更点を整理した。
不登校は10年連続増加
Q 不登校の子どもの数を調べる調査のやり方を変えるんだって?
A 文部科学省が毎年実施する「問題行動・不登校調査」によると、不登校の小中学生は10年連続で増えていて、2022年度は前年度比2割増の29万9048人と過去最多に上りました。要因は「無気力・不安」が過半数を占めていますが、この調査は実態を反映していないという指摘がありました。これを受け、文科省は23年度の調査から調査項目や方法を見直すと発表しました。
Q どう変わるの?
A これまでは、いじめ▽教職員との関係を巡る問題▽無気力・不安――などの選択肢から教員が主観で要因を選ぶ仕組みでした。今後は、いじめの情報があった▽教職員との関係を巡る問題の情報や相談があった▽不安・抑うつの相談があった――といった事実の有無を選んで複数回答することになります。
民間調査とズレ、客観性を重視
Q 変える理由は何なのかな。
A 客観性を重視するためです。民間委託した別の調査では不登校の要因を「いじめ被害」と答えた児童生徒が26・2%いたのに対し、文科省の調査で同様に回答した教員は0・2%と大きな差が出ました。例えば教員がいじめを把握できていない場合、不登校の要因が「無気力・不安」に当てはめられていた可能性が高く、主観に基づく回答では要因を正確に把握できないという課題が浮かんでいました。
Q 不登校にはどんな対策があるのかな。
A 文科省は「誰一人取り残されない学びの保障」を掲(かか)げ、児童生徒に合わせてカリキュラムを組める「学びの多様化学校」の設置を進めています。オンラインによる学習支援・健康観察も後押ししています。児童生徒に寄り添った丁寧な対策が進むとよいですね。
回答・斎藤文太郎(社会部東京グループ)
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