吉本興業提供
お笑いコンビ「サバンナ」のメンバーで「ブラジルの人聞こえますか~!」のギャグで知られる八木真澄さん(50)=写真=は、1級ファイナンシャル・プランニング(FP)技能士としての顔も持つ。多忙な中で資格を取得した経緯や日々の節約術、50歳を超えて人生の後半を迎えた心構えを聞いた。 (古根村進然) -FPの資格を取ろうと思ったのは。 コメンテーターとしてテレビに出てもうまく話す自信はありませんが、金融や税制、年金など家計に関わる幅広い知識が必要なFPの能力を身に付けられれば、仕事にも生かせるのではと思いました。65歳を過ぎて全国ネットのテレビ番組にレギュラー出演しているコンビ芸人はほとんどいないので、セカンドキャリアとして、全国各地のカルチャーセンターを回れたらと考えています。 -暮らしに関わるお金に関心を持ったのは。 19歳で芸人になり、フリーランス(個人事業主)として働いてきました。その中で、社会保障や税金などの制度をしっかり知らないと損をすると思っていました。例えば、会社員だったら公的年金として厚生年金があり、家族のための遺族厚生年金が手厚い。でも、僕らは基本的に国民年金だけです。自分自身で老後資金について考えないといけません。今後、必要なお金を把握できたら安心です。お金の流れを知ると世の中の流れも見えてくると感じています。資格や試験に関係なく、学ぶ人が増えればと思います。 -どうやって仕事と勉強を両立したのか。 FP技能検定に向けた勉強を始めたのは約2年半前。毎日必ず問題集を解きました。多い日には13時間。泊まりがけのロケーション撮影の場合も隙間時間に10分程度は問題集に向かいました。検定は1~3級で段階を踏みつつ挑戦できます。勉強はお金がかからないし、何より仕事を忘れられるので気分転換になり、心が落ち着きました。もう習慣化したので、金融商品を取り扱う外務員の1種資格取得も目指しています。 -勉強をして役立った点は。 お金に関わるさまざまな制度に詳しくなりました。例えば、小規模企業共済というものがあります。個人事業主ら向けの退職金制度です。月に千円から7万円まで掛けられ、確定申告の際に全額が控除されます。支払いが難しい月は減額もできるので、稼ぎに波のある芸人も入っておきたいです。所属する吉本興業の芸人養成所(NSC)で生徒にぜひ教えてほしいです。 -自分自身の生活で実際に役立ったことは。 労災保険の特別加入制度を知ったことでした。労災保険は労働者が業務や通勤で事故などに遭った際、給付金を受け取れる国の制度。特別加入制度により、企業などに属さないフリーランスでも入ることができます。保険料は全額自己負担。自分も加入したら、その後にテレビの仕事でゲンゴロウを食べて喉にけがをしました。保険の適用を受け、治療費の自己負担はゼロ。芸能の仕事は移動が多く、事故のリスクもあります。同様にフリーで移動が多い人にはお勧めです。 -物価の高騰が続き、契約者の多くが選ぶ変動型の住宅ローン金利も上がっている。 基本的には、毎日の生活費を切り詰めるしかないと思っています。今後も金利は上昇する可能性があるので、これから資金を借りる人は今の金利じゃないと返せないようなローンは組まない方がいいです。僕自身は昨年、大阪市内にある4LDKの新築住宅を、固定型で32年ローンを組んで購入しました。変動型だと金利が上がった場合に毎月の支払いが多くなるため、固定型を選びました。インフレ時に実質の返済額を抑えることができるのもポイントです。手元の資産を増やすために新しい少額投資非課税制度(NISA)を使うのも手ですが、損をする可能性はあります。 -日々の節約術は。 大好きなウイスキー「白州」の空き瓶に、安いウイスキーを入れて飲んだり、カレーハウスではビーフカレーをやめて、ポークカレーを注文したりします。「グーグルアース」で南米チリのイースター島のモアイ像を見て海外旅行気分も味わいます。 -50歳となり人生後半を迎えた。 いろいろ想定することが大切だと思います。僕は37歳ぐらいまでたくさんテレビに出ましたが、今はたまに見かける人。55歳になったら、たまにも見かけなくなる。寂しいことですが、そう想定しています。 -会社員なら。 個人差はありますが、会社員は30代で仕事を覚え、40代で責任が生まれ、50代~60代で退職金をもらいます。再雇用で収入は70%程度になると思います。また、会社で職場の部下が将来、自分の上司になる場合もある。仕方ないです。上場企業の社員なら、自社株を買って株主になるのも手です。株主は経営陣に意見を言え、気分的にも優位に立てるから。 -今後の心構えを。 お金だけでなく、大切なものを見落とさないようにしたいです。僕にとっては、利害関係のない、心を許せる友達がつくれるかどうかが大事。公園で昼から将棋を指したり、のんびり釣りをしたり。そんな楽しい老後を送るためには仲間が大切だと思っています。 <やぎ・ますみ> 1974年、京都府出身。立命館大産業社会学部卒。94年に学生時代の後輩、高橋茂雄さんとお笑いコンビ「サバンナ」を結成した。2012年に結婚し、2児の父となる。柔道2段、極真空手初段の「筋肉芸人」としても活動。千個以上のギャグを持ち、テレビに出演するなどして活躍している。23年に2級FP技能検定、さらに今秋には1級にも合格した。著書に「年収300万円で心の大富豪」(写真、KADOKAWA)などがある。
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