秋恒例の税制をめぐる議論が14日から始まりました。
■自民「複雑な方程式の解を…」
来年度の税制改正に向けた与党の会合。
例年なら、自民・公明の両党が、暮れに原案をまとめますが、今年は、事情が違います。
この記事の写真 自民党・宮沢洋一税調会長 「今年はメンバーも大幅に変わりましたし、少し複雑な方程式の解を見つけなければいけない」“複雑な方程式”と聞いて頭に浮かぶのは、野党が迫る『年収の壁』の議論です。
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■“103万円”焦点は引き上げ幅■“103万円”焦点は引き上げ幅
夕方、自民党と向き合った国民民主党。選挙で、強く訴えた『年収の壁』の引き上げを、この協議の場で求めていくことになります。
年収が103万円を超えると、所得税がかかることから、アルバイトやパートの働き控えにつながっている『103万円の壁』。
国民民主党は、この“壁”を178万円まで引き上げようとしています。
対する自民党。178万円まで、一気に引き上げることには消極的です。国と地方あわせて7兆〜8兆円ほど、税収が減るという政府の試算や、地方の知事らの懸念の声があるからです。
約20分間の協議を終えて、宮沢税調会長は、こう述べました。
自民党・宮沢洋一税調会長 「(Q.178万円まで引き上げは可能だと考えているか)それは、今後の議論次第だろうというふうに思います。具体的な提案が、恐らく、来週出てきますから、その前に予見をもっていろんなことは申し上げない方がいいんだろうと」 国民民主党・古川元久税調会長 「我々としては、ちゃんと試算をしたうえでの根拠があって出している。ボールは向こうにあると思っている」178万円というラインを崩さない構えです。背景にあるのは、公明党の立ち位置です。
国民民主党は、夕方、公明党とも会っていました。こちらの会は、柔らかなムードで始まりました。公明党は“壁”の解消に、一定の理解を示しているからです。
税制をめぐる具体策の議論は、来週から、自民・公明・国民の3党合同で、本格的に始まります。
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■働き損に…“130万円の壁”も■働き損に…“130万円の壁”も
公明党は、そのほかの“壁”を見直す議論も、同時に進めたいと考えています。“社会保険の壁”です。
勤務先の規模などによって、年収が106万円、または130万円以上になると、配偶者の扶養から外れて、社会保険料の負担が生じる“社会保険の壁”。厚生年金や、国民年金などの保険料の支払いが発生することで、手取りが、大きく減ることになります。
立憲民主党も、この“壁”の解消を目指します。年収200万円までの人を対象に、社会保険料の負担で減った収入を給付金で補填するという法案を国会に出しています。
立憲民主党・山井和則国対副委員長 「103万円の壁以外に大きな130万円の壁もある。130万円の壁の解消もセットでやらないとダメなのではないか」『130万円の壁』に阻まれ、従業員のシフト作りに苦労している現場です。
スーパーイズミ・五味衛社長 「(Q.タイムカードを見てスケジュールを調整)そう。タイムカードを見て。130万円(超えそう)と決まった場合は(シフトを)組み直さないといけない。従業員も社会保険など入らないといけなくなることによって、手取りの額が減る。『非常に大変だな』と感じています」次のページは
■「106万」「130万」壁は2つ■「106万」「130万」壁は2つ
◆“社会保険の壁”とは、年収が一定のラインを越えると、社会保険料、つまり、健康保険と年金の支払い義務が生じることです。
収入ラインには、106万円と130万円、2つの壁があります。
『106万円の壁』の対象となるのは、従業員51人以上の会社で働く人で、一定の要件を超えると、健康保険や厚生年金の加入義務 が発生します。手取りは、減ることになります。ただ、将来もらえる年金が増えたり、傷病手当や出産手当金などを受け取れるメリットもあります。
『130万円の壁』は、多くの人が“より大きな壁”と感じていて、13日、立憲民主党が対策法案を衆院に提出もしています。
対象となるのは、従業員50人以下の会社で働く人。ここで大きな問題となるのが、配偶者の扶養に入っている方々です。この方々は、130万円を超えると“配偶者の扶養から外れる”ことになります。そうなると、国民年金や国民健康保険の支払いが発生します。
年収が130万円ぴったりの場合、年間約28万円になります。
これらの壁があることで、パートやアルバイトの方の“働き控え”が問題となっています。その対策として、政府は、去年10月から“支援強化パッケージ”を打ち出しています。
『130万円の壁』でみていきます。労働時間の延長などで、“一時的”に収入が上がっても、事業主が“一時的”であると証明できれば、引き続き、配偶者の扶養のままでいることが可能という仕組み。ただし、これが認められるのは、“原則”連続2年が上限です。
“106万・130万円の壁”は、“働き控え”などの経済対策だけでなく、“社会保険制度”に関わる問題です。
野村総研のエグゼクティブ・エコノミスト、木内登英さんは「時代にあった社会保険制度に変えていく必要性がある」と指摘しています。
「例えば、配偶者の扶養は専業主婦を前提とした考え方。“106万・130万の壁”の根本的な解消のためには、時代にあった形、世帯単位から個人単位の社会保険制度、つまり、働く人すべてが加入し、保険料を支払う仕組みに変えていく必要があるのではないか」 としたうえで「ただし、社会保険制度の変更となると、損をしてしまう人が出る。公平性などを考慮するには時間をかけた議論が必要」としています。
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