国指定の難病の一つに「ミトコンドリア病リー脳症」という病気がある。島根・出雲市に住む小学4年生の山根結子(ゆこ)さんは、1歳を過ぎた頃にこの難病と診断され、今も運動の発達の遅れや、体を自由に動かせなくなるなど症状が進んでいる。家族や看護師の介助なしに活動することができないものの、2024年春に養護学校から小学校に転校し、普通学級で学校生活を送っている。

普通学級での生活に挑戦する結子さん

出雲市の小学4年生、山根結子さん(9)。1歳を過ぎた頃に難病の「ミトコンドリア病リー脳症」と診断された。その後病状が進み、体を動かしたり、話したりすることができない。

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朝の結子さんの自宅、お母さんの温子(あつこ)さんに朝食を食べさせてもらい、学校に出かける準備を終えると、この日は1人で福祉タクシーに乗り、出雲市斐川町にある中部小学校に向かった。実は4年生になった2024年4月、養護学校から転校し、今は普通学級に通っている。

山根結子さんの担任・和田理香先生:
結子さん、おはようございます。頑張ろうね。

結子さんの担任を務める和田理香先生。前任の学校で長年、特別支援学級を担当。中部小学校で結子さんを受け入れることが決まり、2024年度に赴任してきた。教室では、児童たちが結子さんを温かく受け入れている。

クラスメートと同じ給食を食べ一緒に学ぶ

「ミトコンドリア病」とは、全身の細胞の中にありエネルギーを作る役割を持つ「ミトコンドリア」の働きが低下して起きる病気で、治療法や治療薬がなく、国の難病に指定されている。

結子さんが診断された「リー脳症」は、小児期に症状が現れる特徴があり、運動の発達が遅れたり、それまでできていたことができなくなったりする進行性の病気だ。

全国で患者は約1500人、山陰両県でも20人あまりが病気と向き合っている。

母・山根温子さん:
なぜうちの子がなるんだという感じだった。全然、受け入れられなかった。思っていた子育てとは違うことをしているけれど、結子が私のところに来たのには何か意味があるというのは私の中にあって。(当時は)3日間くらい涙が止まらなかった。

この日は、教室でハロウィーンパーティー。4年3組の教室にやってきた結子さんは「人気者」だ。一緒にゲームなどをしてクラスメートと楽しい時間を過ごした。

そして給食も一緒に食べる。この日の献立は、照り焼きハンバーグに納豆サラダ、さつま汁、クラスメートと同じメニュー。付き添いの看護師が、具材を結子さんが食べられる大きさに切り分けて口に運ぶ。結子さんが学校生活を送るには、こうした介助が欠かせない。

「視線入力」でさらにコミュニケーションを

結子さんは4人きょうだいの次女で、姉と2人の弟がいる。お姉さんの起子(きこ)さんは小学6年生でしっかり者。料理なども手伝って、シングルマザーの温子さんを助けている。

長女の起子さんは、自身のことを「小さな時から料理が好きで、極端に言ったら裁縫とかも私の方が母より得意です」と明るく話す。

また2人の弟たち、1年生の源治(げんじ)くんと年中の福士郎(ふくしろう)くんは一家のムードメーカーだ。

この日、家を訪れたのは作業療法士の白根恵里さん。4年ほど前から、結子さんが気持ちを伝えるのを助ける、「視線入力」をサポートしている。

作業療法士・白根恵里さん:
結子ちゃんみたいに、未就学の子が視線入力を家でするというのは、結子ちゃんが初めてです。

作業療法士の白根さんが説明するのは、目の動きをセンサーでとらえ、マウスを使うようにパソコンを操作する「視線入力」のシステム。結子さんが唯一動かすことができる「目」を駆使して、パソコンに入力することで言葉を伝えることができる。

学校でも「視線入力」のトレーニングを続けた結果、「元気だったら笑って下さい」とのパソコンの音声を聞いた結子さんは満面の笑みを浮かべ、パソコンの画面を通じて、結子さんが気持ちを直接伝えることができた。

そんな結子さんの夢は、みんなと一緒に絵を描くことだ。その夢を目指してトレーニングを重ねている。

母・山根温子さん:
まわりと比べてすごくゆっくりだけど、こういう(難病に向き合っている)子がいるというのを今後も発信するのが役目かなと思います。

結子さんの小学校生活は始まったばかり…多くの仲間と関わりながら、少しずつ歩みを進めている。

(TSKさんいん中央テレビ)

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