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 兵庫県知事選で斎藤元彦前知事が再選を果たした。斎藤氏に関しては、県職員が作成した「パワハラ」に関する内部告発文書が問題となり、その対応を巡って県議会で不信任決議案が全会一致で可決。この結果、斎藤氏は失職し、今回の選挙が行われるに至った。

【映像】鳴り止まない“斎藤コール”の中、ガッツポーズする斎藤元彦氏

 選挙戦の終盤では、県内22市の市長が稲村和美氏の支持を表明するなど、斎藤氏にとって厳しい状況が続いた。しかし、斎藤氏の支持者がX上で「#斎藤知事がんばれ」のハッシュタグを活用し、YouTubeなどでも支持が拡大したことが逆転勝利につながったとされる。今回の結果を受けて「ネットの勝利」「オールドメディアへの反感」などが指摘されるが、知事選の勝敗を分けた要因について、『ABEMA Prime』で議論した。

■「半沢直樹ばりに倍返しする逆襲のストーリーを人々は応援した」

 兵庫県知事選は、投票率55.65%となり、前回の41.10%から14.55ポイント上がった。得票数は、当選した斎藤氏が111万3911票となり、以下、稲村氏97万6637票、清水貴之氏25万8388票、大澤芳清氏7万3862票、立花孝志氏1万9180票、福本繁幸氏1万2721票、木島洋嗣氏9114票となっている。

 元読売新聞記者で報道アナリストの新田哲史氏は、「最大の注目ポイントは、マスコミや大手ネットメディアが、斎藤氏に有利な情報を報道していなかったことだ」と指摘する。「SNSやYouTubeの“草の根”でどこまで広がるか。期日前投票では稲村氏がリードしていたが、投票日の午前に斎藤氏がリードし、午後に差が開いた。最後まで見極めた無党派層が、斎藤氏に流れた可能性がある」。

 インターネットでは「強大な敵に立ち向かう“弱者のストーリー”」が支持されるという。「斎藤元彦が『半沢直樹』ばりに倍返しする逆襲のストーリーを応援しなければと火が付いて拡散した」と話す。

 選挙終盤に稲村氏の支持を表明した22市長の1人でもある尼崎市長の松本眞氏は、「文書問題の事実関係がわからなくなる中で、政策論争に回帰していった。稲村陣営は『ガバナンスと資質の問題』で勝負しようとしていたが、事実関係が不明になり、争点がなくなった」との見方を示す。

 松本氏は「SNSの影響は大きかった」とも語る。「稲村氏は“既得権益側”と扱われたが、ずっと無所属で、今回も推薦を得ていない。体制が弱いなかで従来型選挙をやったのは反省だ。本人以外の応援アカウントを作るなど、戦略的にSNSを発信できたはずだが、選挙に入ってから修正が効かなかった」と振り返った。

■「大きな変化は、有権者の人たちが政策を見るようになった」

 再選後に斎藤氏は、ネットでの支持拡大について、「自然発生的に出てきた草の根、勝手連的な形で、色んな方に応援していただく輪が広がったと感じている」とコメント。対する稲村氏は「何が争点だったのか。斎藤候補と争ったというより、何と向き合っているのか違和感があった」と敗戦の弁を述べた。

 環境副大臣の小林史明衆院議員は、「大きな変化は、有権者が政策を見るようになり、スキャンダルが関係なくなりつつある点だ」と考察する。「現職は実績が評価されるが、稲村陣営は政策よりも姿勢を論点とした。衆院選でも同じことが起きた。立憲民主党は政治資金問題を声高に言い、自民党も国民の関心事を公約として出せない一方で、国民民主党が『手取りを増やす』と訴えて評価されたのと同じ構図だ」。

 兵庫県内60の投票所で、2723人の有権者が回答したABCの出口調査(11月17日)によると、3年間の斎藤県政について、7割以上が「一定の評価」を下した。支持政党別に見ると、自民支持層の5割弱、維新支持層の5割強、無党派層の5割超となる。また、投票で一番重視したことは、政策や公約が約4割、告発文書問題への対応が約1割だった。

 斎藤氏の実績としては、「知事の給料・期末手当3割、退職手当5割カット」「知事公用車をワンボックスカーに変更」「1000億円にのぼる県庁舎建替計画の凍結」「県職員OBの65歳以上の天下り廃止」「兵庫県立大学の授業料無償化」「森林事業など約1500億円の隠れ借金問題の見える化」などがある。

 新田氏は、8月後半から「パワハラや“おねだり”報道に疑問を持った人が、斎藤氏の実績に触れて、『果たして極悪知事なのか』と言い始めた」と説明する。「百条委員会で報じられていない内容も、SNSで切り抜き動画が拡散する。1日数時間の県議会中継から、数分を切り取って、いちいち発言を探す手間が省ける」。そして、7割以上が「一定の評価」をしている調査結果から、「斎藤氏に投票しなかった人をふくめて、ここまでの成果は支持した可能性がある」と語る。

 SNS上では稲村氏についてのデマも拡散された。「(稲村氏が当選したら)外国人参政権が成立する」「1000億円の豪華県庁が作られる」などの話から、「尼崎市長時代に退職金5倍もらっていた」「緑の党の共同代表だった」といったものまであったが、いずれも本人が否定している。

 松本氏は、自身も加わった市長22人による稲村氏の支持表明について、「結果論としては逆に働いた」と反省する。「稲村陣営のアカウントが凍結され、積極的な情報発信ができなかった。『緑の党に所属していた』や『極左』などのデマが出回り、焦りから各市長が声明を出す動きになった」と説明した。

■ネットとオールドメディア

 兵庫県知事選をめぐっては、「ネットとオールドメディアで異なる斎藤氏評」も話題になっている。大手メディアでは、パワハラ、おねだり、告発者の死による「“疑惑”の知事」とされ、ネットでは改革派、ワナにはめられた、パワハラなど証拠なく「既得権益と戦う知事」の構図で描かれていたという指摘だ。

 新田氏は「ネット民からすると、オールドメディアが『悪の権化』とされていた」と分析する。「百条委員会の秘密会が終わった後の囲み取材で(亡くなった職員の)パソコンの中身を言おうとする片山安孝前副知事が『言わないで』と詰め寄られていた。終わった後、記者に『これでいいのか』と怒ると、(やり取りが録音されたデータを)『私は出せないから、新田さんぜひ出してください』と言われた。工夫すれば出しようがある情報をメディアが出さなかったことが、今回の選挙最大の問題だ。」。

 小林氏は「投票者の関心を見ても、文書問題は10%しかない。政策を見ている」として、「SNSの善し悪しではなく、有権者は目前の課題や未来に関心があり、政策がテーマになると認識してほしい」と提言した。

(『ABEMA Prime』より)

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